ちわっす、撲滅寸前の日本紳士こと五反田 弾です。
みなさま世界中で阿鼻叫喚なニュースが飛び交う昨今、いかがお過ごしでしょうか?
俺こと弾は、【七代目五反田号】との出会いにより、色々周りで起きました。
あの後、普通に食堂に戻った俺ですが、ISを見た瞬間に母さんが、
『こらっ弾! 元の場所に戻してらっしゃい! 家には置きませんからね!?』
と、出会いがしらに『七代目五反田号』返却するよう窘められました。
そんな! ご無体なお母様!?
もちろん俺は必死に説得した。今度はちゃんと面倒みるから! と、でも母さんは譲らない。『その言葉は聞きあきました』の一点張り! ええい! なんて頑固な!!
横では、妹の蘭が
『ああ…やっぱりお母さん、お兄のお母さんだ。』
と、なにかすごく絶望した顔をして泣いてたけどってどうした!? さっきまで『弾特製ミルフィーユパフェ』を頬張り、一夏の生写真を見てご機嫌だったというのに!?
誰だ蘭を泣かした奴は!? ぶん殴ってやる! と息巻くと、普通に爺ちゃんに殴られた。顔はやめろよ!! 爺ちゃんみたいに潰れてねぇんだから!!
…もう一発殴られました。
その後は、やれ六代目はどうしたとか、やれ見てくれ弱火! 中火! 強火も思いのままだぜとか、やれ掃除機が今欲しいの母さんはとか、やれほらほら食材もこんなにきれいに微塵切りとか、やれまな板切るな馬鹿野郎とか、わんわんぎゃんぎゃんと家族会議勃発。
途中誰か『…ただいま』とか聞こえたが誰も気にしない。やかましい!! 今大事な家族会議中だ!! と全員で怒鳴り散らした。全く! 空気読めん親父だ!!
でもその後すぐに食堂の扉が勢いよく開いて、なんか黒服の連中が突入してきた。
でも今は家族会議中。爺ちゃんの剛腕一薙ぎで店の外へ吹っ飛んだ。
もう閉店時間だというのに何を考えているのか、マナーのなっていない客は客じゃねぇ! 五反田食堂十カ条の一つだ覚えとけ野郎共!!
そしてさらにヒートアップする家族会議の中現れたのは。
俺の親友、『織斑 一夏』の無敵に素敵なお姉様。『織斑 千冬』さんだった。
スーツ姿でビシッと決めた姿に心奪われかけるも、『へいらっしゃい!!』と返事を返す俺、女性の為なら二十四時間営業も辞さないこの俺です!
あ、爺ちゃん何その溜息?
そんな千冬さんが、俺の姿を捉えた瞬間―――――。
身の毛もよだつ、狂った様な笑みを浮かべ突進してきた。
思いっきりぶん殴られた上に、襟を掴み片手で俺を空中へ持ちあげる!!
そして、両手で首を絞めあげ左右にガックンガックン揺すり―――。
『貴様は私に何度薬局に向かわせれば気が済むんだ!!? あ゛ぁっ!? 店員に顔覚えられた挙句! 当然のように胃薬を差し出された私の気持ちが、お前に分かるかぁぁぁっ!? ポイントも貯まって栄養ドリンクがついてきたぞこの馬鹿者がああああぁぁぁぁぁぁ!!』
血走った眼で睨みつけられ、怒鳴り散らされました。
お、落ち着いてくれ千冬さん。蘭が怖がって震えてるからマジやめてください。
その後、千冬さんを追って来たらしい、眼鏡巨乳の美人さんがやってきて千冬さんを羽交い絞めにして泣き叫んで止めようと奮戦。
『先輩ぃぃ!! ブレイク!! ブレイクゥッ!! おおおお落ち着いてくだしゃいいい!!』
『離せ――――っ!! こいつだけはもう勘弁ならん!! 一夏の教育にも私の胃袋にとっても害悪にしかならんこいつだけは――――――――っ!!』
『へい! とりあえずお二人とも落ち着いて! 『弾特製胃に優しい卵粥』でも作りますから! そんなに興奮しないで!』
『――――――――― 我嗚呼ああああああアアアアア゛ア゛―――――ッ!!(店内の窓全てにヒビ)』
『ひぃぃぃっ!? 先輩人語を喋ってくださいぃぃぃぃぃ!!』
とまぁ、そんなすったもんだの挙句。なんとか千冬さんを宥めすかすことに成功。
途中、一夏も加わり合同家族会議へ進展する。
あ、こらこらそこの姉弟? 隅の方で
『一夏、何が不満だ? 私の何が気に食わない? 言ってみろ? 優先的に直す努力をしよう。』
『ち・・千冬姉!? どうしたんだよ!?めっちゃ震えてるぞ!?』
『いくら私に不満があるからといってもな? …一夏っ。これは無いだろう…!?あんな奴と友達になるなんて、お前、それは無いだろう…!? なぁっ!? いくらなんでも、お前っ、これは…駄目だろぉぉぉ…っ!?』
『千冬姉っ!? しっかりしてくれよ千冬姉っ!? 大丈夫! 俺が付いてる! 俺が傍にいるから!! 俺千冬姉のこと大好きだからっ!! な!?』
ってな感じで、弟の肩掴んで訴えてないでこっち来なさい。
そう言うと、千冬さんに修羅の様な形相で睨みつけられました。
疲れてんのかな? 毎日大変そうだもんな千冬さんも。
うん? 何だ一夏? は? その言葉を絶対千冬さんに言うな? なんで? 労ってるだけ・・・分かった分かった、血の涙流して肩掴むな。分かったよ。
まぁ、その後はようやく一夏に癒された千冬さんが正常に起動。
一夏と俺、二つの例外である俺達の、今後の事についての話し合いが始まった―――――。
* * *
そして日が少し経ち。
俺は荷物の入ったバックを肩にかけ、爺ちゃんと母さん、そして蘭と共に五反田食堂の入り口前に立っていた。
ま、早い話が、IS学園に強制入学って話だ。今日はその見送り。
「んじゃ、行ってくるぜ! 爺ちゃん、俺が帰るまで店潰すなよ?」
「ああん!? 馬鹿な事言ってんじゃねぇ!! そんことあるわきゃねぇだろう!」
「本当かよ? ま、休日とかにゃちょくちょく帰るから。それまで出前も一時休業ってことで頼むぜ。」
「けっ! 帰って来ない方がせーせーするわっ!!」
「もう、お父さんたら無理しちゃって。弾がようやく『業火野菜炒め』の味を受け継いでくれことにあんなに喜んでたくせに♪」
「なぁっ!? ば、馬鹿言え!! 喜んじゃいねぇよ!! 遅すぎて呆れてたんだ俺は!」
「はいはい♪」
そう、俺はようやく五反田食堂鉄板メニュー『業火野菜炒め』の免許皆伝を得ることが出来たのだ!!
ま、といっても爺ちゃんみたいに、二つ同時に調理する荒業はまだまだ精進が必要だけどな?
…ったく遠すぎんだよ爺ちゃんの背中はよ。
「いいか弾? あっちで修行を怠けてみろ? 一発で分かるからな!? そんときゃ容赦しねぇぞ!」
「分ってるって! ま、俺も良い機会だと思ってるからなー。くくく! 俺の腕がどれだけIS学園のエンジェル達に通用するか試してやるぜっ!!」
「…その前に、お兄が避けられそう。」
「失礼な! 紳士である俺が避けられる筈は無いぞ!!」
「…は~、全くもう! IS学園には料理修業の一環で行くわけじゃないでしょうお兄!? 自分の立場理解してる!?」
「次期五反田食堂二代目!! そして紳士!!」
「違うでしょ!? 一夏さんと同じ、世界でたった二人のISを起動させられる男子でしょ!? そんなんで大丈夫なの!? ISの訓練は厳しいって話したでしょ!?」
「あーISな。『七代目五反田号』の為にも頑張らんとなー」
「そうそう!なんだ分ってるじゃない!もうお兄ったら―――。」
「どの位で免許とれんだろうな?」
「――――――んなのある訳ないでしょうが馬鹿兄!?」
「さすがに不味かったよな~、俺無免許運転だったんだし。ん!? 待てよ!? 免許ということは筆記試験もあるのか!? うわぁ、『七代目五反田号』で出前配達するには、まだまだ道は険しいぜ。」
「自動車学校とIS学園を混ぜ込むなぁっ!! ISで出前なんて政府が許すかーっ!!」
「おいおい良いか蘭? 時代は変わるんだぜ?五反田食堂だって、変わっていかなきゃ!」
「けっ! いっちょ前な事言いやがって!」
「飯が美味くてIS出前速達便も可能な五反田食堂!! 明るい食堂の未来の為!二代目は努力を惜しまないぜ!!」
「ああああ、駄目だ…! 本気の眼だ…!」
「ついでに嫁も探してくるか。」
「本当に何しに行く気なのよぉ!? この馬鹿兄ーっ!?」
「もちろん! 『五反田食堂IS学園店』を開店する事も視野に入れてるぜ!!」
「「おお!」」
「『おお!』じゃなーいっ! お爺ちゃんもお母さんも関心しないでよーっ!!」
妹の絶叫が蒼い空に響く中、とりあえず『五反田食堂』二代目筆頭候補 五反田 弾。
本家離れて、いざIS学園へ武者修行!待ってろよレディ達!!
ちょっと静かになるけれど、
五反田食堂は絶賛好評開店中。みんなでいこうぜ五反田食堂。
* * *
そして今現在。
場所はIS学園へ移り、只今俺は、クラスの一番後ろの席に座っています!!
ああ、何と素晴らしき空間!! 周りは一夏以外は全て女の子!! 夢のようです!!
そして教卓には、あの巨乳眼鏡の女神さま。
やばい! 此処は天国か!?
そんな中、一夏はガチガチに緊張しているようでブルブルと、小気味に震えていた。
チワワかお前は? うむ萌える。
そんな一夏に向かうのは、女子達の容赦ない視線。やはりフラグ乱立王の名は伊達じゃないということか。
ちなみに俺にも多少視線を感じるが、すぐに視線は一夏へ向く。そりゃそうだ。
俺は『まぁまぁかな?』止まりの準イケメン。一夏は『はぁ、はぁ、堪んないっ!!』レベルのイケメンだ、どっち見るかなんて比べるまでもない。羨ましいぜチクショウ!!
でもな? 一つだけ妙な視線を感じるのだよ。
俺はすぐ隣の席へ顔を向ける。そこに移るは一人の女子生徒。
ぶかぶかな制服が素敵な、どこかのほほ~んとした子だ。
ふむ、少し話して見るか?
「…出前の人だ~。お~。」
「YES! 出前のひとです。」
「おー、こんにちは~」
「ちわっす! どうも五反田 弾です。」
「えへへ~、私は布仏 本音っていうんだよ、よろしくねー」
「可愛い名前だな。萌えます。」
「えへへ~、ありがとー。」
「お近づきの印に、これを食えばいいじゃない。」
「なになにー・・・・おー!チョコレートだー。」
「ハイ口あけて?」
「あ~♪」
「もごもぐ。うむ流石俺、美味いじゃないか」
「あー!? ひどいー! ひどいよだんだん~!」
「だんだん?」
「そー、だんだん~。チョコレートちょうだいよー」
「SHR中に間食なんて駄目だろう? 何を言ってんだ全く。」
「さっきだんだん食べたじゃないのー! ずるいー! ずーるーいー!」
「そうだな大人ってずるいよな…分かる。凄い分かる。」
「話しきいてない~。ううぅ~っ。お菓子ー…。」
あらやだ、可愛いじゃないこの娘!
しょぼーんとした姿が俺の心をダイレクト!! うむ萌える。
「そんな貴女に朗報です! 二択問題、次の内正解はどれ?」
「なに~?」
「正解すれば、『弾特製スペシャルムースパフェ』を御馳走!」
「する~! する~!」
「そうか、では答えてもらおう!! 正解はどっち!?」
1、一夏(攻め)×弾(受け)
2、弾(攻め)×一夏(受け)
「―――――― シンキングタイム一分! レディGO!」
「え~!? どっちかなのー!?」
「あ、あのちょっと? 何騒いでるの? 先生に見つかるよ?」
「あ~、いい所に~! 一緒に考えて~!」
「え?一体何ってぶふぉ!? ななな!? えー!? 何!? 何これ!?」
「さぁ!残り四十秒!」
「どっちだと思う~?」
「え!? そ、そうね…1、あ、でも!?」
「私は1! 絶対1よ!」
「ちょっと待って! 2の方がおいしいじゃない!?」
「何言ってんのよ!! 断然1よ!!」
「あれ~? 答える人が増えてるー。」
「ちょちょちょっと!? みなさん何をしてるんですかー!? 今はSHR中で、自己紹介の時間ですよー!?」
「…おい弾? お前また何かやってんのか?」
「ただのクイズだ! さぁ!残り十秒!」
「ごごご五反田君!? 一体何をしているんですかー!? あうう! どうしよう! 織斑先生から、目を離すと危険って忠告されてたのにー!!」
「はぁ全く。おい弾、SHR中に一体何を――― って何だこれ?」
「俺とお前の関係を指している。正解はどっちだと思う?」
「意味分かんねぇぞ。」
「まぁ深く考えずに気楽に答えな少年!」
「「「「「(ゴクッ。)」」」」」
「攻め受けってなんだよ。まぁ、どっちかって言うなら俺は攻撃がいいな。」
「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!」」」」」
「―――― なんだ!? いきなりなんだよ!?」
「一夏、優しくしてくれよ…?」
「何だ急に!? やめろ気色悪い!?」
「ねー? だんだん~? パフェは~?」
「うーむ、答えられなかったしなー?」
「う~っ。(しょぼーん)」
「ゴフッ(鼻血)! 何この萌え動物…!?」
「いきなり鼻血吹くなよ!?」
「吐くのはいいのか?」
「なお悪いわっ!?」
「どっちだよ!? 我がままだな!!」
「もう黙ってろよお前!?」
「それはそうと、しょうがない。今回は特別に作ってやるぜ!! 感謝しろよ!!」
「わーい!やった~!」
「――――――――― そうか、では私からも褒美をやろう。」
時が止まった。
全員が押し黙り、先程の騒動が嘘のように静まり返る。
「…山田君? すまなかったな。害虫のようなとんでもない奴がいるクラスの挨拶をおしつけて?」
「いいいいいいいいいいいいえぇぇぇ!? ととととととんでもにゃいでしゅ!?」
コツ…コツ…と、近付いてくる足音。
おおおぉぉぉ!? な、何だこのプレッシャーは!?
全員がガタガタ震え、中には半泣きになっている娘もいる! 大丈夫か!?
「―――――― 全員、席に戻れ。」
シュバッ!っと、全員が残像を残し席に着戻る。
すげぇ!? 忍者か君達は!?
「くくく…今日も絶好調じゃないか? ごたんだぁあ?」
俺の席の前に立ち、千冬さんが俺を見下ろす。
わお、眼が殺人者のそれになっているっ!?
これはまずいな。此処は俺の冴えわたる機転で和まそう! それしか手は無い!!
「――――― 織斑先生。」
「…何だ?」
「今日もお美しいですね!」
「…で?」
「…最近お疲れ気味で?」
「…ああ、私の目の前の奴のせいでなぁ?」
「そうですか~。そりゃ大変ですな。あっはっはっは~♪」
「…。(ビキッ!)」
「そういやお腹の調子どうですか? なんかこの前つらそうでしてから心配だったんですが。」
「…おかげさまで。まぁた胃薬が切れてなぁぁ?」
一夏が千冬さんの後ろで、必死に俺に合図を送っているのが見える。
うん?どうした顔が真っ青だぞ?
『そ・れ・い・じょ・う・は・や・め・て・く・れ・!』
落ち着け一夏分ってる。このままじゃ駄目だってことくらい。
だが俺を甘く見るなよ!?
これぞ起死回生の一手だぁっ!!
「おおう! それなら丁度良かった!」
「…あ?」
ゴソゴソと鞄をあさり、それを取り出す!
くらえぃっ! これぞ秘密兵器!!
「実は俺、胃薬を用意してきたんですっ!! 新商品みたいですが要ります?」
――――― 五反田 弾。IS学園の初の授業は、天井から吊るされて受けました。
後書き
弾がIS学園に入学しました。でもその分千冬さんの胃の調子がカオス状態に。不憫すぎます。今回はあまり話しは進んでいませんね。さて次回、弾のIS『七代目五反田号』の待機状態が判明します。