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No.27655の一覧
[0] 【習作 IS 転生 チラ裏より】 へいお待ち!五反田食堂です![釜の鍋](2013/03/18 01:45)
[1] プロローグ[釜の鍋](2011/11/27 15:22)
[2] 第一話   妹一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:30)
[3] 第二話   友達二丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:37)
[4] 第三話   天災一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:43)
[5] 第四話   試験日一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:56)
[6] 第五話   入学一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/12 12:28)
[7] 第六話   金髪一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 16:30)
[8] 第七話   激突一丁へいお待ち![釜の鍋](2013/03/18 01:39)
[9] 第八話   日常一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:13)
[10] 第九話   友情一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:38)
[11] 第十話   決闘 【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:54)
[12] 第十一話  決闘 【後編】 コースは以上へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:49)
[13] 第十二話  帰還一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 18:33)
[14] 第十三話  妹魂一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:08)
[15] 第十四話  チャイナ一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:43)
[16] 第十五話  暗雲?一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:53)
[17] 第十六話  迷子一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:19)
[18] 第十七話  約束一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:43)
[19] 第十八話  始動一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:13)
[20] 第十九話  光明一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:56)
[21] 第二十話  幻影一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/28 01:59)
[22] 第二十一話 協定一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/26 12:52)
[23] 第二十二話 氷解一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:51)
[24] 第二十三話 思惑一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 19:27)
[25] 第二十四話 開戦一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 18:38)
[26] 第二十五話 乱入一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/26 18:09)
[27] 第二十六話 優先一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:46)
[28] 第二十七話 三位一体【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:13)
[29] 第二十八話 三位一体【後編】コースは以上へいお待ち! [釜の鍋](2013/03/18 23:04)
[30] クリスマス特別編  クリスマス一丁へいお待ち?[釜の鍋](2011/12/25 22:00)
[31] 短編集一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/23 23:29)
[32] 短編集二丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:24)
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[27655] 短編集二丁へいお待ち!
Name: 釜の鍋◆93e1e700 ID:3759d706 前を表示する
Date: 2012/09/17 17:24
【短編集一丁へいお待ち!】からの続きになります。


*   *   *


~ 短編その七 【 淑女の為のお悩み相DAN!! 】~


【ある日の五反田食堂(弾中学三年生時)】


「……はぁ……」
「……蘭分かってくれ……俺達は兄妹なんだよ……」
「いきなり妙な事口走ってんじゃないわよ馬鹿兄!?」
「え? 兄妹の禁断の愛の垣根について悩んでたんじゃねぇの?」
「そんな気味の悪い事考えてすらいないわよっ!?」
「俺は週三で考えてるのにっ!?」
「考えなくていいわよっ!? しかも無駄に多いしっ!」
「ちなみに残りの週三で母と子の禁断の愛について考えてるよ?」
「何考えてんの馬鹿じゃないの!? お母さん! お兄がまた変な事言いだしてる!」
「あらあら♪ でも息子が最初に異性として意識するのは母親だって聞いた事あるわよ?」
「何その要らない情報!? っていうか満更じゃなさそうな顔しないでお母さんっ!?」
「母さん愛してるっ!」
「私も大好きよ弾♪ でもゴメンね? 私には愛する父に可愛い息子と娘がいるの」
「構うもんかっ!」
「その中の息子がお兄でしょうがぁ!? 構えっ! お母さんも悪ふざけしないで!」
「「割と本気だぞ(よ)?」」
「うわあああああん! おーじーいーちゃーんっ!?」
「――おう弾っ! お前何蘭を困らせてやがんだっ!!(厨房から出撃)」
「ちなみに残り一日で、どうやったら遠い爺ちゃんの背中へ追いつけるか考えてる」
「最後の一日だけ凄く真面目な事考えてるっ!?」
「……馬鹿言ってねぇで腕磨きな(厨房へ退場)」
「必ず追いついてやるさ! 待ってろ爺ちゃん!」
『……へっ! 口だきゃあ一人前だな』
「何だか、段々お兄がお爺ちゃんの対応に慣れて来てない!? もうっ! だからふざけないでよっ! 私今凄く悩んでるんだから!」
「よし分かった兄に任せろ。何を悩んでいるんだ蘭? この兄がバッチリ解決してやる」
「……いい」
「大丈夫だ安心しろ蘭! ……かわいいいもうとをこまらせるそんざいは、みーんなおにいちゃんがけしてあげるからね……?(シャッシャッと刃物を研ぐ、虚ろな笑みを浮かべる妹想いの優しい兄)」
「何する気なの!? 何をする気なのっ!? 止めて何だかすっごく怖い!?」
「ねぇかあさんあまがっぱどこだっけ……?」
「あらあら。ちょっと待っててね? 今探してくるわ」
「探さないで!? 絶対にお兄に渡さないでお母さんっ!? お兄が明日の朝刊に乗っちゃう!?」
「だいじょうぶだよらんあしたにはおまえにやさしいせかいがひろがってるからね……?」
「正気に戻れ馬鹿兄ぃぃぃっ!」
「――で、結局何を悩んでるんだ? あっ爺ちゃん研いだ包丁、此処置いとくぜー?」
『おう、置いとけ』
「ん? 蘭、何を頭を掻き毟って机に突っ伏してんだ?」
「お、お、おおおお、お兄の所為でしょうがああああっ!? ああもうっもうっ!」
「お前が正気に戻れって言ったんだろう。可愛い妹の願いは即叶える。兄として当然だろう?」
「~~~~~~っ!!(涙目でキッと睨む)」
「はい俺が悪かったっ!! だから泣くなっ!? ねぇ泣かないで!? 俺も泣くぞっ!?」
「……泣いでな゛いも゛ん……っ!!(ゴシゴシ)」
「ああそうだな俺の目の錯覚だったよ! ……で、結局お前の悩みって何なのよ? お前の自慢の兄に明確になっている不可能な事は一つしかないぞ? 逆上がり」
「まだ出来なかったんだ!? ……話せばいいんでしょう話せば……」
「あ……でも無理に話す必要ないんだぜ蘭……? 大丈夫、お兄ちゃんはお前が話してくれるのを何時までも待つさ……(優しい瞳)」
「聞け」
「はい」
「んんっ! ……実はね、私の通ってる学園での事なんだけどね……?」
「ああ、『私立聖マリアンヌ女学園』な?」
「う、うん……それで何だけど――」

『おや? もしかして若大将、蘭ちゃんの悩みを聞いてあげてるのかい?』
『悩み……それじゃあアレの時間だなっ!?』
『いつでも行けるよ若大将っ! スタンバイOKだっ!!』

「……え? 何? 常連さん達が騒がしいけど……」
「――ふむ? 確かに蘭の悩みを解決するなら……ついでに『アレ』もやっておくかっ!!」
「は……? アレって何?」
「まぁ見ていろ蘭っ! お前の悩みの必ず解決してやるから……そんじゃ行くぜぇ!! 五反田食堂常連客のみなっさああぁぁぁんっ!?(パンパンッ!!)」

『『『『『――イエス! マイロードッ!!』』』』』

ドタドタ! バタバタ! ガチャガチャガチャガチャッ!! サッサッサ!

「――なっ何ぃ!? 何なのおおおおっ!?」


*   *   *


――ダダンダンダダンッ! ダダンダンダダンッ!♪(未来からやって来る鋼の戦士の歌)


「――さぁ今日も始まりましたっ! 淑女達の悩みや相談事をしっかりバッチリ瞬時に解決するこのコーナーッ!! 五反田食堂ラジオ局! 五反田 弾の『淑女の為のお悩み相DAN』!! 本日もこの五反田食堂より、五反田食堂二代目筆頭候補であるこの俺、五反田 弾が司会進行を務めて行くぜっ!! 準備は良いか野郎共ぉっ!?」

『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』』』』』

「――っ何よこれええええっ!? って言うか食堂の机を並び替えただけじゃないのっ!? しかも常連の皆さんまで何してるんですかっ!?」
「安心しろ。ちゃんと編集、音響もばっちりだ! 即席だけどな?」
「そんな事聞いてないし!? 何なのコレ!? ――って本当に音響とかちゃんとある!? このマイクも何処から持って来たの!?」
「蘭。五反田食堂をこよなく愛する常連さん達の幅の広さを舐めちゃいけない。これ位朝飯前さ!」

『『『『『常連客を舐めちゃいけないよっ!?』』』』』

「聞いてないって言ってんでしょうがっ!?」
「おいおい言葉使いに気をつけろよ? これこの地域一帯に生放送中なんだぞ?」
「……え? 嘘っ!?」
「いやマジで。地域限定だけどな? 結構人気なんだよこのコーナー。ファンレターも沢山届いてるんだぜ!? 凄いだろっ!?」
「凄いだろじゃないわよ馬鹿――じゃ無くてお兄っ! ああもう何て言ったらいのっ!」
「――さぁ早速始めよう! だがその前にゲストの紹介だ! 本日のビックなゲストはこの方っ! 我が最愛の妹にして、五反田食堂の大人気看板娘っ! 私立聖マリアンヌ女学園に首席合格まで成し得た才女にして天使っ! 食堂の年下癒し系アイドル、五反田 蘭ちゃんだあああああっ!!」

『『『『蘭ちゃあああああああああああああああああああああんんんっ!!!!!』』』』』

「――ば、馬鹿止めてよお兄っ!? 恥ずかしいじゃない!(真っ赤)」
「はははっ! 赤くなった可愛らしい蘭の姿をリスナーの皆さんにお見せ出来ないのが残念です! さて本日も沢山のお悩み相談のお便りが寄せられましたっ! ありがとう淑女達! 今日もバッチリ解決して行こうと思いますっ!」
「何処に寄せられて来たの!? 何処に届くの!?」
「ではではっ! 最初のお悩み相談のお便りはこちらっ! 近くの小学校に通う女の子。ペンネーム『ももこ』ちゃんからのお悩み相談です」
「……ほ、本当に手紙が来てるんだ……」
「『だんおにいちゃんこんにちは、いつもたのしくラジオをきいてます』――はい! こんにちはっ! おおう、嬉しい事言ってくれるねぇ。字もとっても可愛らしくて最高だねっ!?」
「いつも聞いてるっ!? いつこんな事してるの!? 私知らないよっ!?」
「『じつはとってもこまってることがあって、きょうはおなやみのおてがみをかきました』――ほうほう? 何を困ってるのかな? 『ももこにはとってもなかのいい、いぬのダルタニアンがいます』……どこかの銃士に出てきそうだね?」
「其処は別に良いでしょうが……その子の勝手じゃん……それで?」
「ふむ『いつもいっしょだったダルタニアンなんですが、じつはこのまえのおさんぽのときにはぐれてしまって、それからずっとかえってこないんです。どんなにまいにちさがしてもみつけられないんです』――何だって……!?」

『『『『『それは一大事だっ!?』』』』』

(……常連さん達生き生きしてる……それにしても大事なペットが行方不明かぁ……)
「『いまごろおなかをすかせてるのかもしれません。さびしくてふるえてるかもしれません。もしかしたらけがをしてうごけないんじゃないかとおもうと、ももこはしんぱいでよるもねむれません』――そうだよな心配だよな……!」
「張り紙をして協力を頼んでみたりしたのかな? もしまだしてなかったら、やらないよりはマシだから試してみたらいいんじゃないかな?」

『『『『『蘭ちゃん優しいいいいいいいいいいいっ!!!!!』』』』』

「――ふっ当然だ。俺の自慢の妹だぞ?」
「だからそう言う事言わないでってば!?(赤面)」
「『おねがいですだんおにいちゃん! ダルタニアンをみつけてください。みつけてくれたら、ももこのちょきんばこをあげてもかまわないです。おねがいします。おねがいします』――ふっ、その貯金箱は『ももこ』ちゃん。君の為に大事に取っておきなさい……手紙にも薄らと何かが濡れた痕があるな……きっとこのコーナーが『ももこ』ちゃんにとっての最後の頼み綱なんだな……」
「ど、どうすんのお兄? 何だか凄く大変な事頼まれちゃったんじゃ……この地域だけでも結構範囲が広いんだよ?」
「心配無用だっ! 『ももこ』ちゃん! この俺に任せろっ!! ……ほう? この手紙と一緒に付いてる写真に映ってる犬がダルタニアンか……『ももこ』ちゃんの笑顔も最高に可愛らしいねっ! ――お前等ぁっ!!(シュバッ!)」

『『『『『(パシィッ!!)――イエス! マイロード!』』』』』

「ちょちょちょっと!? 何をする気なのお兄っ!?」
「――まぁ見てろ……五反田食堂の絆の力を特と見よっ!!」

バタバタバタッ! ザザー……ッ!! ピピピッ! ブルルルッ――ガチャ! ドタドタドタッ!

『此処一カ月以内の白の大型犬に関する情報は――』『地域住民からの目撃情報を絞込んで――』『身元不明の白の大型犬を保護したと言う人物は――』『人工衛星からの写真から割り出し――』『人員を回せ機動隊も――』『消防局より入電。ダルタニアンらしき――』『警察庁からも協力が――』

「――って何だか色々と凄い事を始めちゃってるううううううっ!?」
「――ふっ、だから言ったろう? 五反田食堂常連客の皆さんの幅の広さを舐めるなってな?」
「いやいやいやおかしいでしょう!? 何か人工衛星とか聞こえたんだけどっ!? そんなの動かせる職業の人なんていたのっ!?」
「うん。週二でくるぜ? ほら、いつも端の方で『業火野菜炒め定食』を食ってる禿げのおっさん知ってるだろ?」
「あの人そうだったんだ!? ――あ、どっどうもこんにちは! いつも御贔屓にして頂いてありがとうございま――ってええええっ!? 何でいきなり泣き出すのぉ!?」
「そりゃお前、お前の大ファンだからだろう? 営業時以外で声を掛けられて感無量だったんだな……うんうん。あのおっさんは中々の節度を守った紳士だ」

『良かったなぁアンタ!』『常連客やってて正解だったな!』『羨ましいぜこの野郎!』『ありがとう……ありがとう……! 私はこれからもずっと常連客でいるよ……!!』

「そ、そうなんだ……家の食堂って一体……?」
「――ふむ? そろそろか……?」
「……えっ何が……?」

『『『『『――若大将っ!!(シュパンッ!)』』』』』

「――(パシィッ!)ジャスト三分……中々のタイムだ」
「はいっ!? ど、どう言う事!?」
「さてさてー?(パラッ)……ふっ! 流石だなお前等……! 今この放送をきっと聞いくれてるだろう『ももこ』ちゃん!? ビックニューースだっ!! 君の大切なダルタニアン――見つけ出したぜぇっ!!」
「嘘ぉっ!? は、早っ!?」
「ダルタニアンは此処から一駅離れた町の、老夫婦の住むお家で保護されていたよっ! 大丈夫元気だっ! 迷子のダルタニアンをその家のお婆さんが見つけて、首輪を付けている事からきっと飼い主と逸れてしまったんだろうと思って、家で保護してくれてたんだってさ! 情報網を駆使して、老夫婦が飼い主を探してるのを五反田食堂の常連客達が突き止めたよっ!!」
「……(唖然)」
「さぁ『ももこ』ちゃん! この放送を聞いていたら小学校の校庭までダッシュだ! ダルタニアンを乗せたヘリが学校の校庭に向かってるぜぇ!!」
「ヘリ!? 学校の校庭!? 何時用意したのそんなのっ!?」

『……ああ御苦労。そのまま校庭に着陸しろ……問題はありませんよね?』『勿論ですよ。――(ピッ)私だ、校庭から生徒及び教師の避難は……よろしい』

「――とまぁそう言う訳だ」
「自衛隊っ!? 小学校の学長までいるのっ!?」
「五反田食堂を愛して止まない方々だ。お客さんは大事にしなきゃならない事の大切さが良く分かるだろう?」
「これもうお客さんとかそう言うレベルの話じゃ無くなってるんじゃないの!?」


チリリリリーン! ……ガチャ。……パタパタパタ。


「弾ー? 貴方に電話よー?」
「おおう? 電話?」

『『『『『蓮さあああああああああああああああああああんんんっ!!!!!』』』』』

「あらあら♪ 皆さん、どうぞごゆっくり♪」

パタパタパタ……

「――って何も言わないのお母さんっ!? 既に認めちゃってるのこの状況!?」
「さて一体誰からだ……? へいお待ち! 五反田食堂二代目筆頭候補の五反田――っておおう!? もしかして『ももこ』ちゃんかな? 随分早いね……タクシーのおじちゃんが送ってくれた? ――お前等……」

『『『『『――ふっ……!(良い笑顔でサムズアップ)』』』』』

「それでダルタニアンとは――そうか良かったね! 無事に会えたんだ! え? ……はははっそれは俺に言う事じゃないよ。うんうん……じゃあちょっと待っててね? ――お前等ぁ! 耳の穴かっぽじって良く聞けぇ! 良いよ『ももこ』ちゃんっ! せーのーっ!(受話器を常連客の方へ向ける)」


『――おじぢゃんだぢっありがどおおおおおっ!! ふえええぇぇぇんっ!!』
『バウバウッ! ワオオオオオォォォーンッ!!』


『『『『『――おっしゃあああああああああああああああああああああああっ!!!!!』』』』』

「これからもダルタニアンと仲良くね『ももこ』ちゃんっ! また何か困った事があったらいつでもお便りを送ってくれっ! いつでも即時解決してやるさっ!! ――俺達への報酬はっ!?」

『『『『『悩み事が消えた女の子の笑顔ですっ!!』』』』』

「百点満点だ……! それじゃあね『ももこ』ちゃん! ――良しっ! 悩み事の一つを無事に解決っ! ……ふっ全く、五反田食堂の常連客達はみんな連合に紹介したい奴等ばかりで困るぜ……ん? どうした蘭?」
「……ぐしゅ……ううぅ……良かったね……私こう言うのに弱いのよぉ……!」
「はっはっはっは! 全く蘭は涙脆いんだから! そこが可愛いんだけどなっ!」
「あのお兄が人様の役に立ってるなんて……うぅぅ……! これ夢じゃないよね……?」
「うん。蘭がいつも兄である俺をどう思ってるのか良く分かる一言だな。――さぁ続いてのお悩み相談にいくぜぇ! 張り切って行くぞお前等ああああああっ!?」

『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!』』』』』

「それじゃ次のお悩み相談の手紙なんだが……此処は蘭に呼んで貰うとするかね?」
「……え? えええええっ!? 私が読むの!?」
「そりゃゲストなんだし。そう言う役割もゲストの仕事の内だぜ! さぁ呼んでくれ!」
「わ、分かったわよ……コホン! え、えーとでは続いてのお便りは。ペンネーム『メロン』さんからのお便りです。『五反田くんこんにちは。私は近くの高校に通う女子高生をしています』」
「はいこんにちはっ! おおう……! 年上のお姉様からのお悩み相談か……!」
「はいはい……『相談って言うのは他でもありません。実は私、仲の良い三人の友達がいるんですが、些細な事で喧嘩をしてしまって……それ以来、仲直りが出来ないでいるんです』ってこれはお兄でもすぐに解決無理なんじゃない?」
「ふむ? ……もしやこれは……続けてくれ」
「う、うん……『どちらが悪いとも言えませんが、私も売り言葉に買い言葉を口にしてしまって……私にも非があったんだと今では反省しています。けど……中々仲直りの切っ掛けが掴めなでいるのが現状なんです。……お願いです五反田くん。私は一体どうしたらいいのか教えてください』――だって。ううぅん……素直に謝れば解決すると思うんだけど」
「そう簡単に行かないってのが友達ってもんだぜ蘭? 些細なすれ違いで微妙な関係になっちまう。友情って言うのは深くて繊細なんだよ」
「お、お兄が……何だか凄く真面目な事言ってる……!? ねぇこれ本当に夢じゃないよね!?」
「確かに俺が紳士の夢を具現化したような存在なのは事実だが?」
「あ、大丈夫いつもの馬鹿兄だ」
「――さて! この『メロン』さんからのお悩み相談だが……実はこれ別に俺が解決する必要は全く無かったりしちゃうんだよなぁコレが!」

『『『『『――何だってえええええええっ!!!!?』』』』』

「ナイスリアクション! クラッカーは何処かね?」
「そんなのある訳ないでしょうが! って言うかお兄、解決する必要が無いってどういう事なの?」
「おう! 実はだな? この『メロン』さん意外にも、似たようなお悩みのお便りが他に三通届いてるんだよ」
「……え? 三通って……もしかしてその手紙の送り主って言うのは……」
「まぁ、まず蘭の考え通りで間違いないと思うぜっ! と言う事は後俺がやる事は唯一つだ! 聞いてるかい『メロン』さん! そして他の三通のお便りを送ってくれた淑女さん達っ! 四人の心の中の想いはこのコーナーでバッチリ理解できただろう? 後はどうするべきかは分かってるよね!? もうお互いに意地張ってないで! 今すぐ携帯にでも電話を掛けて街に遊びに行ってきなよ! そうすりゃ明日からまたいつもの楽しいスクールライフが送れる筈さっ!!」
「え、えっと! お兄の言う事が珍しく的を得てると思いますんでっ! これを切っ掛けだと思ってください! いつまでもすれ違ったままっていうのは寂しいですよっ! 仲直りできるように私も願ってます!」
「その通りっ!! それじゃぁ俺達が背中を押せるのは此処までだっ! 健闘を祈ってるぜ! それじゃあね『メロン』さんっ!」
「頑張ってください!」

『『『『『俺達も応援してるよっ!!!!!』』』』』

「――よしこれにて二つ目のお悩み相談も完了! 後は『メロン』さん達次第だな。それにしても流石蘭だな。何だかんだ言っても初めてとは思えない働きぶりだ! 兄は鼻が高いぜっ!」
「べ、別にこれ位普通でしょ……それにしても、『メロン』さん達って一体どんな理由で喧嘩なんてしちゃったんだろう? 四人とも悩み相談に手紙を出す位、ホントはとっても仲が良さそうなのに」
「…………」
「ん? どうしたのお兄?」
「……聞きたいか? 理由?」
「え……何知ってるの?」
「ああ……『メロン』さん以外の三通のお便りの中に、その理由をちゃんと書いてくれているお姉様がいてな……で? 聞きたい?」
「な、何よ……まぁ此処までやったからには、ちゃんと知りたいとは思うけど」
「……『ビックプリン』『牛子』『スイカ』」
「……は? 何それ?」
「……他の三通のお姉様達のペンネームだ」
「……はい?」
「そして先の『メロン』さんと合わせると……蘭? この四つを並べてお前なら何を連想する?」
「…………」
「ちなみに喧嘩の内容だが……女性のとある部分がとっても発育してしまっている仲良し四人組が、だれが一番大きいのか……と言う理由で、お互いに『私そんなに大きくないもん!』『普通よ普通っ!』といった口論になってしまったらしい。全員それぞれコンプレックスだったみたいだ」
「…………」
「しかもその内悪口に発展して『牛乳!』『ホルスタイン!』『無駄脂肪!』と互いに罵り合ってしまって……まぁそう言う事らしい」
「……何で……四人とも……そんなペンネームな訳……?」
「喧嘩してしまった自分への戒めというか罰と言うか……そう言った理由でそのペンネームにしたんだって」
「…………」
「…………」
「……【ピ――】ば良いのに……」
「ナイス音響! 放送禁止用語を良くカットしたっ!!」
「……何なの? ねぇ何なの? せっかく……せっかく人が真面目に考えて答えてあげたのに……何なのそのくだらない喧嘩の理由は……!?」
「本人達は酷く真剣みたいだったようだし良いんじゃね?」
「自分達だけで勝手にやってれば良いのよっ!! 馬鹿じゃないの!? 本当馬鹿じゃないのっ!? 何よこれあたしに対する当てつけ!? コレが狙いで私にお便り読ませたのこの馬鹿兄っ!?」
「おいおい、何言ってんだよ蘭」
「うぐ……! ご、ごめん……ちょっと我を忘れちゃって――」
「――当然だろっ!!」
「――【ピ――】ええええええええええええええええええええぇっ!?」


【 しばらくお待ちください 】


「――途中皆様にお聞かせ出来ない音が鳴り響いたりしましたが、気を取り直してお悩み相談を続けて行くぜっ!」

『『『『『若大将不死身いいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!』』』』』

「――フンッ!」
「おいおい機嫌直してくれよ蘭? ちょっとしたお茶目じゃないか♪」
「……次こんな事したら、しばらく口利いてあげないから……!」
「あれ? お前腹話術出来たっけ?」
「そう言う事言ってんじゃないわよっ!?」
「まぁまぁ、とにかく次のお便りに――って既にさっきので一気に四通処理したから、もうお悩み相談のお便りは無いんだよね。後はファンレターばっかで嬉しい悲鳴だね!」
「良かったね~? ……さっきのお便りのお姉さんも達も、ついさっきお礼を言いに食堂の前までわざわざ来てくれてたし~?」
「ああ、あれはマジで驚いたぜ……あの四人のお姉様方は本当に高校生なのか? 全員高校生離れしてる美貌とバディの持ち主だったな……」

『まさか……あの藍越学園の誇る『魅惑の果実四人衆』だったとは……!?』『凄まじいオーラだったぜ……!』『最近の娘は発育が良いんだな……』

「……これだから男は……! 何よあんなの……!」
「ちなみにお姉様全員にメルアド交換されてしまったが……俺にこれをどうしろと? 『今度遊ぼうね♪』って言われてもなぁ」
「何よ嬉しい癖に、この助平兄」
「まぁ嬉しい事は否定しないが……あのお姉様方にはそれぞれちゃんと彼氏いるんだぜ? ただ本当に遊ぼうって意味だろう。その辺を勘違いしないのが紳士ですっ! だから妬かないの」
「ばっ……!? や、妬いてないもんっ!!」
「それに大体俺、淑女は大好きだが付き合うとなれば全く別だからなー。その辺はちゃんとしてます紳士だから!」
「へ? どう言う事?」
「うん。俺って『この娘は俺が幸せにしたい! 他の野郎がこの娘の隣に立って幸せにするのなんて我慢ならないっ! 俺の手で幸せにしてやりたいんだっ!』って思える娘以外と付き合う気なんて一切ないからねぇ? お試しで付き合うとか論外。紳士に最愛の淑女は唯一人のみで十分だ」
「そ、そうなんだ……ち、ちなみに今お兄がそう思える人って……?」
「残念ながら未だ現れてないなっ! まっ何時か見つけるさっ! ちなみに今の俺の一番は蘭だぞっ!?」
「だから変な事言うなって言ってんでしょうが馬鹿兄っ!!」

「――さて、ぶっちゃけどうでも良い俺自身の恋愛理論を語った所で――ここでメインディッシュ!! さぁ最後のお悩み相談の相手は……何を隠そうゲストにして俺の最愛の妹っ! 五反田 蘭ちゃんのお悩み相談だああああああああああああっ!!」

『『『『『蘭ちゃああああああああああああああああああんんんっ!!!!!』』』』』

「え……えぇぇと……」
「さぁっ蘭!! 可愛いお前を悩ます事とは何だ!? 兄に相談するんだ、バッチリ解決してやる!」
「……分かった言うわよ。……実は私の通う『私立聖マリアンヌ女学園』での事なんだけど……」
「おう、俺も出前で何度か足を運んでるぜっ!!」
「――だから来るなって言ってるでしょうが!? 男子禁制なんだからっ!! って言うか誰よ出前頼んでる人って!?」
「俺は紳士だ!」
「関係ないわよっ!? しかも何でいつも正門を堂々突破して行くのよっ!?」
「やましい事が無い事をアピールしようと思って」
「警備員さん達をその度に撃退してる奴は十分不審者よっ!」
「全く……あの程度の護りで淑女達の安全を護れている気でいるとは正気を疑うぜ! 女学園の理事長さんとも話し合ったが、もう少し何とかしなければならんな」
「何で理事長先生と話しあってんの!? いつ!? 何処で!?」
「メル友だ」
「いつの間にそんな関係にっ!?」
「ところで女学園のシスター達は、何故全員スタンロッド持ってんだ? 正門の警備員よりも戦闘能力高い気がするんだが」
「お兄を追いだす為よっ!? 何だかシスター達いつも『今日は何時来るのかしら……?』『警戒を怠っては駄目よ』って随時警戒態勢取ってるんだから!」
「俺のお蔭か!」
「お兄のせいよ馬鹿っ!!」
「ふむ? しかし、そんな淑女達の聖域の中だというのに、愛しい妹であるお前にどんな悩みが振り掛かったというんだ?」
「………っ!!(キッ!)」
「お、おおう……!? な、何だ蘭急に……?」
「……実は昨日学園から帰る時……私の下駄箱の中に手紙が入ってたの……」
「手紙……? え? それってまさか……」

『まさか蘭ちゃんにラブレタアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』『一体何処の身の程知らずの男だっ!?』『そいつの名前と社会保障番号を調べろ』『俺達の蘭ちゃんにいいいいいいいっ!!』

「――落ちつけお前等ァ!! ……蘭、確認したい事がある」
「……何よ」
「……学園のお前の下駄箱に入ってたんだよな?」
「……そう言ってんじゃん」
「……聖マリアンヌの?」
「……そうよ」
「……聖マリアンヌ『女』学園の?」

『『『『『――あ』』』』』

「……」
「……男子禁制だよな?」
「……うん」
「……野郎は入って来れないよな?」
「……お兄は無理矢理入って来てるけどね」
「……って事は……手紙の差出人は……淑女と言う事になるんだよな?」
「……そうね」
「「……………」」

『『『『『――こいつはヘビィな問題だああああああああああっ!!?』』』』』

「お、おおう……! 流石我が妹だ……まさか可憐な他の淑女まで虜にしちまうとは恐れ入ったぜ……!? こいつは中々デリケートな問題だっ!!」
「……(ムスッ)」
「で、どうすんの蘭? 兄としてはお前にその道には行ってほしくないのが正直な気持ちなんだがね?」
「……(ゴソゴソ)」
「うむん? どうした?」
「……ん(可愛らしい手紙を弾に差し出す)」
「え? これが例の恋文か? 何、読んでみろってのか? 流石に淑女の想いが詰まった恋文を勝手に読むのは紳士として許容できんのだが?」
「……ん!(ズイッ!)」
「なんだよ全く……分かったよ。言っとくけど中身は読まないぞー? おおっ可愛らしい封筒だな! その淑女さんのセンスの良さが分る代物だ!」
「……」
「裏に差し出た淑女の名前は書いてないな。書いてあっても口にはしない! それが紳士! きっと照れ屋なんだろうなぁ――お? 何なに? 『蘭お姉様へ――』っておお年下かっ!! 我が妹がお姉様なんて言われるのは何だか新鮮――…………『――お姉様の素敵なお兄様へ渡してください』………?」

『『『『『―――え?』』』』』

「…………」
「…………」
「……読まないの?」
「……ちょっと失礼」

ガタッ。――スタスタスタ……ピシャッ!

『『『『『…………』』』』』

………ガラッ!

『……蘭ちょっと来てくれ』
「……(ガタッ)」

――スタスタ……ピシャッ!

『『『『…………』』』』』


――って娘を――
――ってる――清楚で可愛――
――って――家名――
――有名――嬢様――


『『『『『…………』』』』』


――ガラッ! ピシャッ! スタスタスタスタ……ガタガタッ。


「「…………」」


『『『『『…………』』』』』



「……蘭。兄はどうしたら良いと思う?」


『『『『『――若大将が相談しちゃったっ!!!?』』』』』


「――当然だドアホッ!? 手紙の内容見るにマジで本気みたいなんだよっ!? こっちも真剣に考えてあげなきゃ失礼だろうがあああああああああっ!!」
「――知らないわよ馬鹿兄っ!! 勝手しろっ!! ――フンッ!!」






*   *   *



~ 短編その八という名の間幕 【 第三の男 】 ~


【 ある高校の通学路 】


テクテク、スタスタ、コツコツ (道を歩く見目麗しい三人組の女子高生)


「――っだぁぁ……今日の試験何とか乗り切ったぁ!」
「もうこれは自分へのご褒美に何か甘い物を買ってあげるべきだね! という訳で今から駅前のケーキ屋へ直行すべきだと、本官は愚考する次第であります中入江隊長っ!」
「うむ! その通りよ灯下軍曹! それじゃあ今から三人で――」
「駄目よ二人とも? 試験で午前中に帰れるのは遊ぶ為じゃないんだから。これから図書館で勉強するって話だったでしょう?」
「「ええぇ~~っ!?」」
「ええ~じゃありません」
「そ、そんな殺生な事言わないでよ花梨~~っ! このまま勉強漬けだなんてアタシおかしくなっちゃうよ~!」
「糖分が! 糖分が足りないでありますっ!」
「もう……二人ともそんな事している暇なんてないでしょう? 今日の試験の手応えはどうだったの?」
「うっ!? そ、それは聞かないで……どうか赤点だけはご勘弁……っ!」
「ふふ……燃え尽きたよ……真っ白にさぁ……」
「だから言ったでしょう? ちゃんと勉強しておかないと後悔するよって。今日の分を取り返す為にも明日の為に頑張るべきじゃない?」
「うぅ~……そ、そういう花梨はどうだったのよ?」
「姉さん……そいつを聞くのは野暮ってもんだぜぇ……」
「うーん? まぁいつも通りかな。試験範囲もそう広くなかった事だし」
「まぁ聞きました奥さん? 流石優等生の花梨さんねぇ? なんて余裕のあるお言葉かしら」
「本当ねぇ奥様? 私達とは頭の出来が違うのでしょうね、おほほほほ」
「……私帰る」
「ちょっ!? 嘘ウソ冗談だってば花梨! 待って待って待ってぇ~!」
「知らない。二人だけで行ってくればいいじゃない。勉強会はキャンセルでいいわよ」
「見捨てないでお代官様ぁっ!? 明日の古文本当に拙いんだってばぁ!?」
「日本人である私にイングリッシュは解読不能ですっ!」
「……真面目にする?」
「しますっ! もうふざけたりしません!」
「私も授業中もそれくらい真剣になれよと思う位集中しますっ!」
「……そう言えば、この先に美味しいシュークリーム屋さんがあったよね?」
「そ、それはまさか……巷で美味しいと評判の、あの一個五百円という超高価なシュークリームの事でございますか……!?」
「あ、あっしらの様な貧しい身でおいそれと手出しできるもんじゃねぇべさぁ……!?」
「私は別に全然、全く、微塵も、これっぽっちも興味なんてないんだどね?」
「「……」」
「けどもし、どうしてもって食べて欲しいっていうなら。私も貰ってあげても良いと思ってるんだけどなぁ?」
「「……ぜ、是非奢らせてくださいませ花梨様……」」
「あら本当に? もうしょうがないなぁ二人とも♪」
「……枝理あんた今手持ちある?」
「こ、今月はピンチであります……! けど、あの花梨の様子を見るに一個二個じゃ治まらないかと思うんだにゃー……!」
「うぅぅ……そうよねぇ。なんであんな小さいのに一個五百円なのよぅ……っ!」
「こ、こんな時に五反田君がいれば……っ!」
「それ財布扱いしてないあんた……?」
「うぅん? きっと買うよりまず作ってくれると思って……」
「……ああ成程……あああ……今月欲しい靴があったのにぃ……!」
(……少し意地悪すぎたかな? 仕方ないなぁ。一個で許してあげようっと……ふふ♪)


テクテク、スタスタ、コツコツ……


「――(ピタッ)うん? 何だろうあれ?」
「ん~? 何なにどうしたの?」
「文? どうかしたの……あら?」


『……はぁはぁ……っ少し無茶をしすぎたようですな……この程度で息を切らせるなど老いたものだ……。とにかく……一刻も早く『あの御方』のこれを届けなければ……ふぅ……』


「……何だか様子がおかしくない? あのお爺さん」
「本当だ。今にも倒れそう……何か持病持ちなのかな? かな?」
「そんな大変じゃない! 行こう二人ともっ!」
「分かった分かった、流石に見て見ぬ振りは後味悪いしね」
「あらほらさっさ♪」


タタタタタタタタッ……!


「あのっ! 何処か具合でも悪いんですか?」
「む……?  おやおや、これは見目麗しいお嬢さん方ですなぁ……こんにちは」
「随分疲れてるみたいだけど、どうしたんですか?」 
「いえいえ大した事ではあろませんよ。年涯もなく動き回ってしまい、少し疲れているだけです。ちょっと休めばすぐに元気になりますから……ふぅ……」
「大丈夫そうにはみえないにゃー? 顔も青いし、汗びっしょりだし? 飲み物買ってきてやろーかい?」
「ほっほっほ、何とご親切なお嬢さん方でしょうか、この爺感無量です……大丈夫です。本当になんでもありませんから、どうぞお気になさらず。何処かへ遊びに行かれるご予定なのでしょう?」
「でも……」
「とてもそうは見えないんですけど……」
「遠慮しなくても良いんだぜぃお爺ちゃん? 花の女子高生三人に介抱してもらうまたとないチャンス到来だぞ!」
「おおっ! それはそれは魅力的なお話でございますなぁ。とても興味ありますし本当に残念ですが、何の心配も――むっ?」


――ザザザッ!(黒い男達に囲まれる)


「――な、何この人達っ!?」
「いきなり現れたっ!? っていうか何か変な物着てるっ!?」
「でもこんな現れ方する人が身近に一人居る気がするのは何故だろね? デジャビュ?」
「ぬくっ……!? しまった囲まれたか……此処まで接近に気が付かぬとは不覚……! お嬢さん方は早くお逃げなさいっ!」
「え、ええっ!? 一体どう言う事何ですかっ!?」
「お爺さんの知り合いなのこの人達っ!?」
「友達は選ぼうよ、オールドマンッ!」


カッカッカッカッカッカ……


「――ククク……見つけましたよ『セバスチャン』殿? 随分とお疲れのようですねぇ?」
「……え……誰? 野郎の声は耳が腐るので話しかけないで貰いたいものですな。唯でさえ最近耳が遠くなってきてるんですから……。全くっ! これだから最近の『ドーベル』はっ!!」
「知らない振りして私の事を普通に非難するなっ!? どう言う意味だ貴様っ!?」 
「うわっ! 何か偉そうなおっさんが出てきたっ!」
「ドーベル……え? 犬?」
「あー……言われてみれば何か負け犬臭い雰囲気してるなぁ」
『『『『『……ぷっ』』』』』
「――ぐっ……!? ふ、ふんっ! 初対面の人間に対して失礼極まりない小娘共ですねぇ……! 全くこれだから日本の女は……やはり大和撫子など、既に過去の産物でしかないのだな……お前たちも笑ってるんじゃないっ!」
「そうですなぁ笑う所なんて何一つありません。本当つまらない若造だ。マジさみーですな」
「黙れこの耄碌爺がっ!!」
「え……あの、気分を悪くしてしまったのなら御免なさい」
「謝る必要無いんじゃない花梨? いきなり大の男数人で周りを囲むような人に、そんな事言われたくないし」
「そうだそうだー!」
「屁理屈を……! まぁいい……今はそんな事で問答している暇は無い。さて『セバスチャン』殿? 貴殿が私達から盗み去った物を返していただきましょうか? あれは私達の物なので……誉れ高い紳士であった筈の貴殿が、まさか盗人に成り下がるとは嘆かわしい事ですねぇ」
「人聞きの悪い事いうものではないっ! ただお前達の秘密ラボ内の厳重にロックされた中央ブロック最深部に捨ててあったの物を『勿体ない……まだ使えるのに』と思って持ち帰っただけではないかっ!!」
「設置してあったんだっ!! いい歳した爺が非行少年みたいな言い訳をするなっ!!」
「な、何か私達そっちのけで話が進みだした……」
「おおっ! 何か陰謀のにおいがするじぇい!」
「え、枝理……」
「アレをあそこまでカスタマイズしたのは私達ですっ! アレは私達の物だっ! 我等が目的の為にも今すぐ返していただきましょうっ! さぁ今すぐ渡すのですっ!」
「私の一存ではなんとも……」
「主犯は貴様だろうがっ!? ええいっ埒が明かん! 貴殿の意見などどうでもいい!!……答えなさい。アレは今何処にありますか?」
「めしゃあまだかいのぉ?」
「都合良くボケた振りをするなっ! 答えろアレは何処だっ!?」
「アレアレと言われても……若造、お前はさっきから何の事を指して言っておるのだ?」
「……耄碌爺が……! ちっ……仕方ありませんねぇ……おい、お前達」
『『『『『――ハッ!』』』』』


――ガッ!!


「――キャアッ!?」
「うわっ! 何すんのよっ!?」
「離せこんにゃろ~っ!!」
「……何の真似だ若造? 繊細な少女達を羽交い絞めにするとは……」
「耄碌した貴殿が思い出せるようにして差し上げようかと思いましてねぇ? この娘達にも協力をしてもらおうと思ったまでですよ、ククククク……」
「……今すぐお嬢さん方を解放させろ。外道が」
「ではもう一度だけ聞きます。アレは何処だ? 『セバスチャン』」
「……こちらも、もう一度言う。その薄汚い手を離せ外道共(ギラリッ!)」
『『『『『――うぐ……っ!?』』』』』』
「……強情ですねぇ……おい」
『ハ、ハッ!』


ザッザッザ……


「ではまず貴女から協力してもらいましょうか?」
「――ヒッ!?」
「花梨っ!? この離せ変態っ!! 花莉に何かしたら承知しなわよっ!!」
「離せ~ッ! 離せってばぁっ!!(ガジガジッ!)」
「……何をする気だ?」
「さて……? 唯、私は真の淑女でない女などに、如何なる事をしても何の罪悪感も感じない男でしてねぇ……? 自分でも困った性格だと思いますよ……ククククク……!」
「あ……あ、う……ひっく……!」
「花梨っ! 止めなさいよっ泣いてるじゃないっ! 」
「私が代わるから花梨をはなせーっ!」
「おやおや……美しい友情ですねぇ? そうは思いませんか」
「……淑女に涙を流させたな……? 若造……楽に死ねると思うなよ……?」
「おやおや……口ではそう言う割に、何も行動を起こさないのは何故です『セバスチャン』殿? ああ、そうでしたね。貴方は私達との攻防に次ぐ攻防で大分お疲れの様ですから……行動を起こせないと言った方が正確でしょうか?」
「…………」
「どうやら図星の様ですね? ククク……ッこれがあの『DANSHAKU』の盟友と言われた紳士の限界かっ!? 恐れるに足らんっハハハハハハハハハッ!!」


――ヒュッ……ドカァッ!!


「――ぐあっ!?」
『『『『『ドーベル様っ!?』』』』』
「――っ勝機っ!! フンッ!!」


シュバババッ! ドスドスドスッ! ヒュババッ!


『『『ぐあっ!?』』』
「――ふぅ……お怪我はありませんかお嬢さん方?」
「花梨っ!」
「うわーん花梨ぃっ!」
「文ぃっ! 枝理ぃっ!」
「ぐ……!? しまった! 何をしている貴様等っ!」
『『『『『も、申し訳ありません』』』』』
「……ふぅ、私の十八番『カードスルー』の腕もまだまだ現役ですな。肝心な所で油断するとは何たる愚かさか……紳士を自称する事すら貴様に取って大罪だ若造。名前も『駄犬』に改名してはどうですかな?」
「だ、黙れ! 先程まで手も足も出せなかった耄碌爺が偉そうに口を開くなっ!」
「ほっほっほ! 御覧なさいお嬢さん方、あれが正に負け犬の遠吠えと言う物でございますよ」
「ぐ……ええいっ一体何が……ん!? これは……鞄? これが私の顔目掛けて飛んできたのか……!? 一体誰がこんなふざけた真似を――」




「――おいテメェ等。人里さん達に何してんだよ……!?」




「み、御手洗君……っ!?」
「嘘……! 御手洗君が鞄を投げて助けてくれたのっ!?」
「お、おおおおお……!? ドラマチックが止まらない……!?」
「貴方が隙を作ってくれたのですか……感謝致します。日本にも見所のある若者がまだ居たのですなぁ。この爺、感無量でございます」
「――っ!? 小僧っ貴様の仕業か!?」
「だったら何だよ? 聞き覚えのある声を聞いて来て見れば……大の大人が寄ってたかって女の子を羽交い絞めにしやがって……胸糞悪い事してんじゃねぇよっ!」
「小僧が……!!」


ダダダッ……ズザッ(三人娘の前に、守る様にして男達と対峙する数馬)


「人里さん、中入江さん、灯下さんっ! 大丈夫だった!? 変な事されてないかっ!?」
「う、うん……! で、でもどうして御手洗君が……?」
「学校はどうしたの?」
「サボり?」
「ち、違うよ人聞きの悪い事言わないでくれよ……今日は試験で午前授業だったんだ。その帰りだよ。たまたま通りかかったら、人里さん達の声が聞こえて何事かと思ってさ」
「そ、そうなんだ……ありがとう御手洗君」
「今凄く格好良いよアンタッ!」
「惚れ直したたじぇいっ!」
「「ええぇっ!?」」
「そいつはどうも。それで、こいつ等は?」
「……普通に流しちゃうんだね」
「……まぁ、友達期間が長かったからなぁ……」
「……枝理は乙女心に大ダメージを受けたっ!」
「ほほう? これはこれは……この先の展開が実に興味深い方達ですなぁ」
「ん? アンタは?」
「初めまして御手洗様。私は困っていた所を、このお嬢さん達に声を掛けて頂いたしがない爺でございます」
「そうなんですか……で? あいつらは?」
「唯の変態です」
「やっぱり変態かっ!?」
『『『『『『違うっ!!』』』』』』
「似たようなものじゃないですかっ!」
「そうよ変態っ!」
「痴漢っ!」
「最近この辺りには集団で行動する変態が多発するようで……多分彼等で間違いないでしょう」
「白昼堂々最低な奴らだな……警察に突き出してやるっ!」
「違うと言っておろうがっ!?」
「変態はみんなそう言うんだよっ! 変態っ!」
「最もな意見ですな」
「わ、私警察に連絡を入れるっ!」


――ギュンッ! ガシッ!


「――キャアッ!?」
「人里さんっ!?」
「「花梨っ!」」
「――さてはパワードスーツを着込んでいるな……全く悪知恵だけは働く『駄犬』だ」
「チッ……手を煩わせてくれる……っ! 下手な真似はしないでもらいましょうか」
「お前っ……人里さんから手を離せっ!」


――ブンッ! ドスッ!!


「――か……はっ……!?」
「「「御手洗君っ!?」」」
「小僧が調子に乗るなよ? さっきは不意打ち喰らったが、貴様のような奴に遅れを取る私では無い。身の程を弁えろ」
「て……めぇ……!?」
「『セバスチャン』殿も、妙な真似をしない事です。さもなくば……」


ドガッ! メキメキ……!


「――うぎっ……あああああっ!?」
「御手洗君っ!? や、止めて! 酷い事しないで下さいっ!」
「足を離してよっ! 馬鹿っ! 最低っ!」
「止めてっ! 止めてってばぁ!」
「では大人しくしていてもらいましょうか……さて、色々遠回りしてしまいましたが、答えて貰いましょうか『セバスチャン』殿? あれは何処に――」
「――むっ!? この巨大なオーラは……!?(何かに気が付く)」


――ォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


「――ん? 何だこの音は……って待てよ? 確か以前にもこん【ドッゴオオオオオオオォォォンッ!!】なぐぼおおおおああああああああああああああっ!?」
『『『『『ドーベル様あああああっ!?』』』』』
「――いかんっ! ハァ!」


シュバッ!! スタッ。


「キャアッ!?」
「ぐ……っ!?」
「花梨っ! 御手洗君!」
「二人とも大丈夫っ!?」
「お怪我はございませんかお二人とも?」
「わ、私は大丈夫です……! で、でも御手洗君が……!」
「あ、ああ平気平気。何とも無いよ……あんな奴のパンチなんて屁みたいなもんだ。……ててっ……!」
「ご、御免ね御手洗君……私のせいで……」
「いや、人里さんが謝る事じゃ無いよ。気にしないでくれ」
「……御手洗君……(キューン)」
「……(イラッ)はいはーい。今はラブコメってる場合じゃないでしょうが」
「そうだそうだー!」
「え? い、いや別にそんな事してるつもりは無いんだけど」
「……二人とも……意地悪……(ムスッ)」
「ほっほっほ……どうやらお元気そうですね。――しかし、一体何故此処にコレが……? 御蔭で助かりましたが」
「これって……? ってうわっ!?」


――ヴォンヴォオオオオオオォォォン!


「む、紫色のバイクッ!? しかも誰も乗って無いのに動いてるっ!?」
「う……嘘っ!?」
「な、何なのコレ……?」
「でも格好良いよねっ!」
「まさか単独で動いたと言うのか……? いや、だが『あの御方』意外に適格する筈がないコレが……一体何故?」


――ピピピッ!


【――アナザーマスター『数馬』の存在を確認。現時点での命令優先順位を変更】
「何ですとぉ!?」
「キャッ……!?」
「うわ喋ったっ!?」
「す、すごーい」
「って何で俺の名前を知ってるんだ!? 俺こんなバイク知らないぞ!」
「アナザーマスター……? まさか……御手洗様とおっしゃいましたか!?」
「おわぁ! な、なんすか突然っ!?」
「御手洗様『六代目五反田号』と言う名に聞き覚えは?」
「ろ、『六代目五反田号』……? それって、確か弾の使ってる自転車の名前じゃなかったか……?」
「――何とっ!? ご、五反田様のお知り合いで!?」
「あ、ああ。小学校の頃からの付き合いで友達だけど……」
「お、おお……! では貴方が、『あの御方』が認めた数少ない男性のご友人だったのですか……!? だがご友人と言うだけでこの『六代目』が反応を示すとは思えん……一体どう言う事なのだ……?」



「……あ、そう言えば俺……弾の奴に『五反田食堂』の手伝いを強制させられて……何度か弾の自転車を借りて出前の配達をした事があるけど」



「――な、何ですって……!? 乗りこなしたのですかっ!? 拒絶反応は起こらなかったと言うのですか!?」
「いや何だよ拒絶反応って……普通に乗っただけだぜ? っていうかこれバイクだし。俺が乗ったのは自転車だし」
「さ、流石は五反田様のご友人でございます……! それ程の偉業を為し得ながら、それを誇る事無く平然と言ってのけるとは……! すみません後で是非サインを頂けませんか?」
「え、えぇぇ……? な、何なんだよ一体? っていうか……弾絡みなのか?」
「そうみたいだね……」
「相変わらず、居てもいなくても存在感が半端ないなぁ」
「そこにシビれる憧れる?」
「「「いやいやいやいや……傍迷惑なだけ」」」


「――ぐふっ……! ま、まさか『DANSHAKU』意外にも適格者が……!?」
『『『『『ドーベル様、しっかりしてください!』』』』』


「……で、バイクに轢かれたのに元気なあの変態は……その弾のお客さんって所だな」
「……凄く納得」
「……ねぇもう帰らない? アホらしくなって来た私」
「えー? でもあの変態達は帰してくれそうにないよ?」
「「「……はぁ」」」


「――ふ、ふふっ! だが飛んで火に居る夏の虫とはまさにこの事……! 全員! アレを捕えなさいっ!」
『『『『『――御意!』』』』』


「――この方ならば……! 御手洗様これをっ!」
「な、何すか? 俺達もう帰りた……って腕時計?」
「綺麗……紫色に透き通ってる」
「高そうな時計だね」
「色々ボタンも付いて、色んな機能がありそうな、よ・か・ん♪」
「これを貴方に託します。貴方ならきっと使いこなす事が可能な筈ですから」
「……は、はぁ……そうですか」


「――油断してる今が好機! かかれっ!」
『『『『『――ハッ!』』』』』


ビュバッ!!


「――御手洗様っ時計の右上のボタンを!」
「あ、ああもう何なんだよっ!? 右上!? こ、これか!?」


――カチッ! 

――ギュイイイイイィィィィン!!


「――な、何だぁ!?」
「キャア!?」
「眩しっ!?」
「ぎゃああ~! 溶けるーっ!?」


【――Fighter mode】


――カッ!! バキャァッ!!


『『『『――ぐわあああああああっ!?』』』』』
「――なっ!? 馬鹿な……!?」


ブシュウウゥゥゥゥ……!! ズズン……!(スモークの中から立ち上がる巨影)


「――なんか人型ロボットに変形したあああああああっ!?」
「う、嘘……!?」
「ちょ、ちょっと待って!? 何か色々追いつけないっ!」
「か、格好良い~……!」
【敵ターゲット確認】
「素晴らしい……! 何をしても反応しなかった『六代目』が……! 御手洗様の手に渡った瞬間、ああも従順に……!」
「……やべぇ……なんか凄く面倒臭い事に巻き込まれた気がする……!」
【心配無用】
「大丈夫じゃねぇだろう……」
「げ、元気出して御手洗君」
「巻き込まれたの御手洗君だけじゃないと思うから……」
「六ちゃん! 悪者退治だ行っけー!」
【命令を寄こせ。アナザーマスター】
「え……俺がするの? まぁいいや……あいつら何とかしてくれ」
【掃討を開始する】


――ギュオンッ!! 

――ドッゴオオオオオン!! チュドドドドドドドドドドドッ!!(爆炎と轟音の嵐)


「ヒッヒイイィィッ……!? 【ズズゥゥン】――あっ……!? ま、待て! お前を此処までカスタマイズしたのは【バキョ!】げふぉッ! 【ドスドスドスッ!】 ゴフッオウェッ!? や、やへ……やめて……助け……!? 【メキョメキョ……!!】ゲェアアアアアアアアアアアアアアアァァァッ!!?」
『い、嫌だぁ! 死にたくない死に――あぎゃあああああっ!?』
『ま、待ってくれ! 命令だったんだ! 仕方なかっ――いぎゃあああああっ!!』
『うわああああああっ!? 嫌だ俺は帰るん――あっ――……』
『どうした? 殺れよ? もう十分生き――嘘です助けてぎゃああああああああっ!!』
『オレ……お前みたいな正義のロボットに倒されるのが夢だったんだ――あ、ちょっと待って? 流石にその武器は正義のロボットにしては猟奇的――ひぎゃあああああああああっ!?』


「ママー? あのおじさん達何してるのー?」
「しっ! 良いから放っておきなさい。世は常に因果応報なのよ……」
「んー……? はーい」


ギュルギュル! ガスガス! ビターンビターンッ!


「……うわぁ……えげつなっ……!?」
「……ふぅ……(パタリ)」
「わぁ!? 花梨しっかりして!」
「デストローイッ!!」
「素晴らしい戦闘能力です……流石は『あの御方』が所有していただけの事はある。――ぐっ……少々無理をし過ぎたようですな……! み、御手洗様……後の事を……!」
「――っておい!? 大丈夫か爺さん! ていうか後を頼むってどう収拾つければいいんだよこの状況っ!?」
「……シャル……ット……嬢……さ、ま……(ドサァッ)」
「うおおおおおいっ!? 何か意味あり気な名前を呟きながら倒れんなああっ!?」
「と、とりあえず気を失った花梨も連れて何処か休める場所に行こうっ!」
「そ、そうだよな! とにかくこの場を離れよう!」
「了解ー! ってなわけで……おーい六ちゃん! このお爺ちゃん運ぶの手伝ってー!」
【了解】
「「いや呼ぶなよ!?」」


ポイッ(ボロ雑巾のような物を投げ捨てる)

ズシン……! ズシン……!


【運搬を開始する】
「ありがとねっ六ちゃん!」
「……何か枝理が速攻で馴染んでるんだけど……」
「……何なんだよ一体もう……あーもう、後で弾の奴に連絡取って見るか……」
【マスターは多忙。連絡は控えるべきだと愚考するアナザーマスター】
「あーそうなのかー……って何なんだよさっきから!? 俺の事アナザーなんとかって呼んで!」
【アナザーマスターだ】
「~~っ! ……はぁ……もう何でもいいや……じゃあとにかく二人を運ぶのを手伝ってくれ」
【了解】
「そっとだよ? 落しちゃ駄目なんだぜぃ六ちゃん!」
【了解】
「へぇ~……何か意外に素直なロボットね」
「――ああ……何か本当に面倒臭い事が待ってる気がする……弾絡みで、こう言った予感は外れた試しが無いんだよなぁ……」
【心中察する】
「余計な御世話だよっ!?」
【……】
「な、何だよ? 急に黙って……?」
「お、怒ったとか……?」
「六ちゃん?」
【……御免……】
「落ち込んでたのかよっ!? 別に怒ってないよ俺っ!?」
「後少し涙声じゃなかったこの子!? 無駄に高性能ね!?」
「御手洗よ~? 六ちゃんに悪気は無かったんだから許してやれよい」
「だから怒ってないってば!?」
【……嫌わないで欲しい……頑張るから……】
「……御手洗君……あのさ、私が言うのも何だけど……この子も反省してるみたいだし……さ?」
「ここは器の大きさを見せつけてやろうじぇい?」
「――だあああああもうっ! だから怒って無いってば!? 畜生っ俺の平穏な午後の時間を返せえええええっ!!」



――この日。もう一つの戦いの物語幕が上がった。(注意・此処はISの二次創作の世界です)



*   *   *



――ギュピーン!!


「――っん!? ……この感じは……?」
「どうした弾っ!?」
「何か問題でも?」
「いや別に大した事じゃないんだが……何か数馬が凄く主人公してる様な気がしてね?」
「数馬……?」
「ご友人ですの?」
「――まぁいいか、今はそんな事気にしてる場合じゃないし……っくそ! 中々開かないな……!」
「だからまずピッキングで開けようとする事がおかしいだろうにっ!?」
「よ、よく此処までこれで開けられたものですわね……」
【――相棒自分を纏ってください! 今すぐに、さぁ早くっ!! さぁさぁさぁっ!!】
「おおう? どうしたんだ相棒。ヤケにやる気だな?」
【いえ、何だか此処で活躍しないと色々と持って行かれそうな予感がヒシヒシと……! くっ……一体何でしょうこの迫り来るような危機感は……!?】
「ふむ? まぁいいか……いい加減面倒になって来たしなっ! 強行突破だ行くぞ相棒っ! 展開ッ!!」


――カツ!!


「――へいお待ち! 行くぜ相棒っ!」
【やらせはせんっ! やらせはせんぞおおおおっ! 見せてくれる! 【特注コンロ・炎の料理人魂】の熱エネルギーを 【五反田包丁 初代・二代】へと流し込む連動技! これぞっ!】
「『五反田包丁 初代・二代【炙り刃モード】』!! 切れ味倍増の二振り包丁っ! その切れ味を特と見よっ!! 行くぜええええええええええええええええええっ!!」


――ズギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァンッ!!


「――な、何と言う破壊力だ……!? 」
「私との戦闘では見せなかった技ですわね……全く、色々と秘密にしている事が多い方ですわ――さぁ私達も参りましょう箒さんっ!」
「承知っ! ――っとコラ弾少し待たんかぁ! 私達を置いて行くなぁ!」


タタタタタタタタタタタッ!!



――閉じ込められた淑女達の元まで……残す遮断扉は後四つ。







*   *   *




~ 短編その九 【 仲良し中学メンバーの日常 】 ~


【中学二年生時代 】


キーンコーンカーンコーン♪


「――一夏ぁ! 一緒にお昼食べてあげるわ。お昼っ!」
「鈴か、別に良いぞ」


ガラッ!!


「――一夏ぁ! お前のお昼をたかりに来てやったぜ。たかりにっ!」
「来なくていいっ!! それより今頃登校して来たのかお前っ!」
「は? 何言ってんだ、ちゃんと朝の点子には出ただろう。携帯で」
「朝のホームルームで先生がお前の名前を呼んだ瞬間に、先生の携帯電話が鳴ったから先生が廊下に出て行ったけど、あれお前からだったのか!? それは出たとは言わねぇよ!」
「って言うか何でそんなドンピシャに携帯掛けられるのか謎よね……」
「展望台の展望鏡から見てたからな」
「「朝っぱらから何処行ってたんだ(のよ)お前(アンタ)はっ!?」」
「でも『へいっ!』って返事したら『……五反田出席……と』って言ってたから、きっと出席扱いだぞ?」
「……先生……一体こいつに何の弱味を握られてるんですか……!?」


スタスタスタ。


「――おーっす一夏。昼飯食いに食堂……って弾。お前今日休みじゃ無かったのか」
「心配してくれたのね数ちゃん♪ でも安心して! 元気良く病院に行ったら『どうせまた仮病だろ』って受付で診察結果を受けたから♪」
「それ診察じゃ無くて受付で追い返されただけじゃねぇのっ!? 何だその常連さんに対する様な病院の受付の反応っ!?」
「人に言われて初めて分かる自分の体調って世の中割と多いんだぜ。ちなみにこれまで一度も『仮病』以外の診断結果を申告された事が無くてな? 全種コンプリートにはまだまだ遠いな……」
「何のコンプリート目指してんだよ!? お前のそれは最早妨害行為以外の何物でもねぇぞっ!? 病院の迷惑を考えろこの馬鹿っ!もう二度とそんな理由で行くなっ!」
「……はいはい分かったよ。もう二度と行かねぇよ」
「は……? 何よ随分素直じゃない……え、やだアンタまさか本当に体調悪いんじゃないでしょうね?」
「お前今日は本当に休んだ方が良かったんじゃないか?」
「……そこで真顔で心配する一夏と鈴にビックリだわ、俺」
「一週間後に大手術を控えて不安に怯える病弱な小学生の女の子を励ましてやるのも、事故で右足が上手く動かせなくなったサッカー少年のリハビリに付きやってやるのも今日で最後か……午前中は誰もお見舞いに来れないから、俺が行く事で少しでも寂しさがまぎれればと思って始めた事だったんだが……」
「おい待て何だその裏事情!?」
「……くそっ! 絶対また会いに来るって約束したのに……!(ドン!と机をたたく)」
「そう言う事だった訳ね……ねぇ数馬さぁ……」
「そう言う事情なら……その、少し位目を瞑ってやれないか? いや学校が大事だって事も勿論分かってるんだけど」
「何でお前ら三人は俺が絡んだ時に限って息ぴったりの三位一体の反応返すかなぁっ!?  だぁぁっもう! 別にお見舞いを止めろなんてって言ってねぇだろう! むしろ、お見舞いになら行って来いよっ!」
「お前それが人にモノを頼む態度か?」
「ウッゼぇぇぇぇ!? こいつ果てしなくウッゼぇっ!?」
「って言うかサッカー少年……? あれ男の子だよな?」
「男には慈悲の欠片も無いアンタにしては、随分優しいじゃない」
「そいつのお母さんが凄い美人でな?」
「うん、凄くお前らしくて失望も湧ねぇわ」
「しかも巨乳」
「――よし弾。次は俺も一緒に行こう(キリッ!)」
「そして数馬も結構自分の欲望に正直だよな」
「少しでも見直したアタシが馬鹿だったわ……頭痛い」
「何? 俺の仮病がうつったか?」
「「「うつるかっ!!」」」


テクテク、スタスタ、コツコツ。


「何だか騒がしいと思ったら……やっぱり」
「流石は五反田っ! 人間台風の異名は伊達じゃないじぇ~!」
「廊下まで声が響いてたよ? あんまり大きな声だしちゃ駄目じゃない。四人とも」
「あっ花梨と文に枝理じゃん。三人ともこれから一緒にお昼?」
「まぁね。鈴達も?」
「そうよ。あっ何なら全員で一緒にお昼食べない? ……数馬もいるし(ニヤニヤ)」
「んなっ!?」
「! な、なな何を言ってるの鈴ちゃん!? わ、私は別に……!」
「いや~ん♪ 照れるにゃー」
「ん? 俺がどうかした?」
「……数馬。お前って本当鈍感だよな――(ドゴス!!) ぐはっ!? 何すんですか!?」
「いやぁ……テメェが言うと嫌味にしか聞こえねぇんだよ一夏」
「その通りだ。先輩から後輩、そして教師。挙句には他校の女子生徒にまでフラグ立てまくってやがるくせに全然気が付かないお前にだけは言われたくねぇわ。――って何だかこのやり取り何処かで見た気がするぞ?」
「あっ! じゃあ俺金髪グラサン! 妹いるならやっぱ俺だろう!」
「なら俺は青髪か」
「「イエーイッ!(パァン!)」」←両手を打ち合わせる弾と数馬
「……お前等って妙な所で意気投合するよな」
「何だかんだ言っても付き合い長いからな俺達。なぁ弾?」
「おっと、後でちゃんと両手を消毒しとかねぇと」
「おいコラァ! お前何だその反応はぁっ!?」
「だってお前便所じゃん。うわ、バッチぃ」
「馬鹿っそれ数馬の前では禁句!!」
「――あっはっはっは! こいつどうしてやろっかなあああああああああああああっ!?」

「――五反田君。御手洗君に酷い事言わないで(キッ!)」
「――人の名前を冗談でも侮辱するとか最低よアンタ(キッ!)」
「――五反田よ~♪ ……テメェ煮えた鉛飲ますぞ……?(ギョロッ!!)」

「……すまなかった数馬。いやマジで御免なさい。貴方と同じ地面を踏みしめてすみません。……ちょっと校門横の伝説の木の下で首括って来るわ……」
「い、いや反省してくているなら良いぜ……? むしろ落ち込み過ぎて生気の無いお前が逆に心配だ……っていうか止めろ! 別の逸話ができるだろ!」
「馬鹿……花梨達の前でそんな事言うからよ。はいはい三人ともそんなに目くじら立てない! あいつ等にとってはじゃれ合い程度で済む事なんだから」
「そ、そうなの?」
「いや、それでも親しき仲にも礼儀ありっていうじゃない」
「御手洗はそこんとこどうなのよい?」
「う~ん……まぁこいつ等なら、腹立つ事には変わりないけど別に本気にはしないな」
「サンキュ便所」
「こいつ凝りねぇな!?」
「二度目はねぇぞゴラアアアアアアッ!?」
「「「……はぁ……」」」
「やっぱり鉛煮て飲ませよーかい?」



*   *   *



【 下校中・ゲームセンター内 】


ブオオオオオオオオオオオオォォォォォォン!


【 YOU WIN ! 】


「――よっしゃ俺の勝ちっ!!」
「っだあああああっ! くそっ最終コーナーで追いつけたのにっ!? も、もう一回! もう一回勝負だ!」
「はっはっはっ見苦しいぞ数馬君! ハンバーガーセット、ゴチになりまーす!」
「くっそ~……! 前までは俺の方が一枚上手だったのに、何時の間に腕上げやがったんだ……!」


――ピカーン! ドゴバキャベキドスドスグシャッ!


【 K・O! YOU WIN! PERFECT!】 


『――我に屠れぬ野郎無し』
『……ま、負けた……? こ、この俺一撃も当てられずに……!?』
『嘘だろ!? 店内ランキング三位の『大トロ好き三佐』が!?』
『誰だあいつ!?』
『分かんネェ!? 『DANSHAKU』ってランキングにいたか!?』
『野郎の使う野郎キャラ風情が、紳士の扱う淑女キャラに触れるなど海の水を飲み干すよりも困難な事だと知れ、未熟者め』
『い、意味が分らないけど強ぇぇ……っ!?(ガクリ)』


「……あっちはあっちで盛り上がってんなぁ」
「……色んな意味でゲーム強いよな弾の奴」


ツカツカ、テクテク、スタスタ、コツコツ


「ちょっとアンタ達ー。何男だけで盛り上がってんの?」
「おっと、悪い悪い」
「鈴達は何処行ってたんだ?」
「UFOキャッチャーを見て周ってた所……けどサッパリだったわ」
「残念……あのヌイグルミ凄く可愛いかったのに」
「ああ言うのって本当に取れる物なの? アームが弱過ぎよ」
「此処は魔窟だぜー? 小銭が面白いように消えて行くっ!」
「そりゃ災難だったな」
「……ちょっと一夏。此処は『俺が取ってやる』とか言えない訳?」
「え? 俺は別にヌイグルミは其処まで欲しいとは思わ「死ね」――って何でだよ!?」
「そう言う事じゃねぇだろ馬鹿。ったくこいつは本当に……よっしゃ、俺がやってみるよ! 人里さん、欲しいヌイグルミって何処にあるの?」
「え? み、御手洗君が取ってくれるの?」
「ふーん?」
「おおー! 何か展開が分る気がするけど、その意気や良しっ!」



――数分後。



「…………」
「……色んな意味で期待を裏切らない奴よね数馬って」
「数馬……お前下手にも程があるだろ」
「――うがああああああっ!? 何でだよ!? 三千円も使ってるってのに!?」
「あ、あの御手洗君? そんなに無理しなくても良いよ? 気持ちだけで十分だから。ね?」
「あははははははっ!! やっぱりこうなっちゃたか~」
「くそっ! も、もう一回だっ!」
「御手洗よ~。諦めも肝心だぜー? だぜー?」


――チャリーン。

――ピコピコピコ。キュルルルキュルルル♪


「お、結構良い位置っぽいぞ数馬」
「良い感じじゃ無い?」
「よーしよーし……! そのままそのまま……っ!」


――ガチッ。ウィーン♪


「あっ! 上がった! 持ちあがったよ御手洗君!」
「っしゃああっ! 落ちるな落ちるなそのまま来い!」
「へーやるじゃない。まぁ流石に三千円も使えばね」
「ラストスパートッ!」


――シュバッ!


「――へいお待ちっ! 貴女の街の五反田 弾ですっ! って言うかみんな俺を置いてくなんて酷いぜっ! 寂しいじゃないか!?」


――バァン!! ←(UFOキャッチャーに思いっきり手を付く弾)

――ポロッ。←(衝撃で落ちるヌイグルミ)


「「「「「あ」」」」」
「………なっ……!?」
「おう?」


キュロロロロロ……パカ。(スカ)



「「「「「…………」」」」」
「…………」
「……おぉ」



「「「「「「「…………」」」」」」」



「――すまん数馬。封印された右手が勝手に……」
「言い訳にしても、もう少しマシな言い訳ねぇのかテメェエエエエエエエっ!!?」
「お、おいおい弾……今のは流石に無いぞ」
「あーあー。アンタ少しは空気読みなさいよ全く」
「五反田君……」
「あんたねぇ……」
「まさかの友の裏切り! 御手洗の運命やぁ如何にっ!?」
「待て次回っ!!」
「灯下さんにノっかってんじゃねぇよっ!? お、お前ふざけんなよっ! 折角、せっっっかく取れそうだったのに何してくれてやがりますかお前はあああああっ!?」
「すまんスマン悪かった。……でも仕方ないじゃん!? 気が付いたらみんな俺一人置いて楽しそうな事やってんだもんっ! 俺も早々に混ざりたかったんだっ! だからちょっと勢い付け過ぎちゃったんだよ!」
「あー、それはお前一人で格闘ゲームやってたからだろ? 勝ち続けてる所声掛けちゃ悪いかと思ったんだよ。……あれ? って事はお前格闘ゲーム負けたのか?」
「おうっ負けた負けた! 全力で挑んだら、初心者の小学生の女の子に手も足もでんかったわ」
「何言ってんだかこいつは……」
「どうせアンタの事だから、その子の為にワザと負けてあげたんでしょう?」
「いや、昔に蘭とゲームやってる時にな。ゲームの対戦で俺が連勝すると蘭が泣いて悔しがって『もう一回! もう一回やるのっ!』って蘭が勝つまでずっと付き合わされてよ。それ以来どうやったら全力を出した上で蘭に勝たせてやれるか試行錯誤を繰り返した結果。紳士技『接待敗北』が『全力敗北』に昇華して、遊びの範疇内だと年下の女の子相手に無条件で発動する変な癖が出来ちまってなぁ……俺、真剣勝負以外での勝負となったらどんな競技でも年下の女の子に完全敗北する自信がある」
「何だその捻くれた自信!?」
「でも酷いよ五反田君っ! せっかく数馬君が取ってくれる所だったのに……」
「……何ですと? ま、まさか数馬っ! 花梨ちゃんの為にUFOキャッチャーやってたのか!?」
「そうだよっ! もう少しだったのにお前のせいだぞ!?」
「お、おおう……! そ、それはマジですまんかった。紳士たるこの俺が何たる愚行を……!」
「う~ん……? でも取れなかったのはある意味、幸運かと思うんだけど? アタシ」
「へ? それはまた何でだね鈴?」
「取れなかった事が幸運な訳あるかっ!」
「いやだって。此処で数馬が花梨の為に『だけ』ヌイグルミとったら……ねぇ?」
「あん? 何だよ?」
「! おおう……成程、確かに……ちょっとしたトラブルの種がまかれるか」
「……あ……」
「な、何よその目はアンタ達……?」
「見つめられると照れるにゃ~」
「ん? ……ああそうか。後二つは確実に取ってやらなきゃいけなくなるよな数馬は、必然的に。数馬の腕だと残りの二つを取るまでに、幾ら金を消費する事になるか分かったもんじゃないし……むしろ取れなかった事は数馬にしてみれば幸運とも言えなくもないか」
「「!? い、一夏が察したっ!?」」
「おい待てっ!? 何だその反応! 普通気付くだろう、これ位っ!?」
「これ位……? ……ねぇ弾? アタシ、常日頃これ位の事に気付かないコイツ殴っても構わないと思うんだけど、どうかしら?」
「ニ、三発殴ってもお釣りはくんじゃね?」
「何でだよ!? 俺何もしてないだろう!」
「何もしないのが問題だって言ってんのよ馬鹿っ!」
「ちょっと待ってくれよ!? 何で俺が怒られてるんだよ!」
「――あっ! そうか、人里さんだけじゃ無くて、中入江さんと灯下さんにも取ってあげなくちゃなくなるか」
「えっ!?」
「おおう!?」
「おっ!」
「えぇっ!?」
「なっ!?」
「わぁおっ!?」
「そうか……そうだよな。何で俺気付かなかったんだろう」
「か、数馬……!? もしかして気付いたの!?」
「数馬……お前やっと人里さん達の気持に……!」
「ふむ? だが今の発言からすると……貴様っ! それはハーレム発言ともとれるぞ!」
「えぇぇえっ!? み、御手洗君て……まさかそんなっ!?」
「御手洗君まさか……!? だ、駄目よそんなっ! 私はそんなの……!」
「ちなみに私は花梨と文なら別に良いぞよ~? 仲良く分け分けバッチ来いだじぇ~?」
「ちょ、ちょっと枝理!? 何を言ってるの!?」
「わ、私は……ヤダからね!? こ、恋人には私だけを見て欲し――」



「人里さん達は仲良し三人娘だもんなっ! 三人ともお揃いでヌイグルミは持っていたいだろうから、後二つは確実に取ってあげなきゃならないよな。うん」



「「「――駄目だこいつ」」」
「は? 何がだよ一夏、弾? それと鈴まで何だよ」
「「「…………」」」
「……あ、あれ? どうしたの三人とも?」
「……御手洗君ヌイグルミ取って」
「え? そ、そりゃ取るって言ったんだし頑張るけど……」
「きっかり三人分ね。私達仲良し三人組だからお揃いで欲しいから」
「あ、ああ分かった……よ?」
「御手洗が! 三つ取れるまで! お金入れるのを止めさせない!!」
「いぃっ!? ちょ、ちょっと待ってそれは――!?」


――シュバ! シュババン!


「へいお待ち! お札を全部両替してきてやったぜ!! 硬化で中身ギッシリ♪ 軽くない財布って最高だよね? はーい連続で行ってみよーっ!(チャリチャリチャリチャリチャリチャリーン)」
「は? 両替って――っうおおおおい!? 弾お前何してやがんだああああああああっ!? お前その手に持ってんの俺の財布じゃねぇかああああああああああ!?」
「千……! 二千……! 三千……! 馬鹿な!? まだ入るだとっ!?」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああっ!!?」
「天罰だな」
「一夏。アンタが言うとイラッとするから黙って」
「だから何でだよ!?」


その後、数馬はヌイグルミを苦悩の末三つゲット。

そして弾も挑戦し、お金をしっかり入れた後ピッキングでUFOキャッチャーの窓のカギを普通に開け、『金は入れたろ? だから何も問題ない』と素手で掴んでヌイグルミを取るという性質の悪い行動を取り、店員に見つかる前に全員でゲームセンターから大急ぎで逃げるように出て行くことになる。


彼等の日常は、今日もまた騒がしくも平穏に過ぎて行く――


(後書き・中学時代メンバー書くのが楽しくて仕方ない……)


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