<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

その他SS投稿掲示板


[広告]


No.27655の一覧
[0] 【習作 IS 転生 チラ裏より】 へいお待ち!五反田食堂です![釜の鍋](2013/03/18 01:45)
[1] プロローグ[釜の鍋](2011/11/27 15:22)
[2] 第一話   妹一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:30)
[3] 第二話   友達二丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:37)
[4] 第三話   天災一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:43)
[5] 第四話   試験日一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 15:56)
[6] 第五話   入学一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/12 12:28)
[7] 第六話   金髪一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 16:30)
[8] 第七話   激突一丁へいお待ち![釜の鍋](2013/03/18 01:39)
[9] 第八話   日常一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:13)
[10] 第九話   友情一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:38)
[11] 第十話   決闘 【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 17:54)
[12] 第十一話  決闘 【後編】 コースは以上へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:49)
[13] 第十二話  帰還一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 18:33)
[14] 第十三話  妹魂一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:08)
[15] 第十四話  チャイナ一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:43)
[16] 第十五話  暗雲?一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 19:53)
[17] 第十六話  迷子一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:19)
[18] 第十七話  約束一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 20:43)
[19] 第十八話  始動一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:13)
[20] 第十九話  光明一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/27 21:56)
[21] 第二十話  幻影一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/11/28 01:59)
[22] 第二十一話 協定一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/26 12:52)
[23] 第二十二話 氷解一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:51)
[24] 第二十三話 思惑一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 19:27)
[25] 第二十四話 開戦一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/02/06 18:38)
[26] 第二十五話 乱入一丁へいお待ち![釜の鍋](2011/12/26 18:09)
[27] 第二十六話 優先一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 16:46)
[28] 第二十七話 三位一体【前編】 へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:13)
[29] 第二十八話 三位一体【後編】コースは以上へいお待ち! [釜の鍋](2013/03/18 23:04)
[30] クリスマス特別編  クリスマス一丁へいお待ち?[釜の鍋](2011/12/25 22:00)
[31] 短編集一丁へいお待ち![釜の鍋](2012/04/23 23:29)
[32] 短編集二丁へいお待ち![釜の鍋](2012/09/17 17:24)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27655] 第二十三話 思惑一丁へいお待ち!
Name: 釜の鍋◆93e1e700 ID:3759d706 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/06 19:27
【 鈴 SIDE 】


…へ? 何? 挨拶しなきゃならないの? しょうがないわねー。

私が中国の代表候補生にして二組のクラス代表でもある凰鈴令よ。よっく覚えておきなさいよね! よろしく。



一夏の馬鹿の愚痴を垂れまくったあの夜から、もう早くも一週間が経った。



私の周りはというと、来週に行われるクラス対抗戦に対する準備と、その話題で持ち切りな日々が続いている。

あの日から。まぁ一夏とは休み時間とかにすれ違ったりするんだけど。

……はぁ……

はっきり言って、私と一夏の間に流れる空気は険悪とはいかないまでにしても、微妙な上にちょっとぎこちない空気が流れているのが現状なのよね。

一夏があたしとの約束をちゃんと覚えて無かった事に関しては、女としてはまだ許す気になれないけど……友達としては大目に見てやってもいいとも思ってるしね。

友達かぁ……はぁぁ~っ……

深い溜息をついて、あたしは机の上に顎を乗せるようにして脱力した。

う~~~っ! なんであそこまで言ったってのにあんな斜め上な解釈をしちゃうのよぅっ!? 一夏の馬鹿! 鈍感! 

机に突っ伏したあたしは「う~~~~っ!」と唸りながら、一夏を心の中で非難する。


うー……で、でもすれ違う度に思うんだけど一夏の奴なんだか元気なかったわよね? なんか、言いたい事があるのに言えないみたいな。

ここ最近の一夏は、なんだか妙に忙しそうに動いてるせいかよく廊下ですれ違うんだけど。
その度に見る横顔がなんか元気ないというか、余裕がないというか……目が合ってもなんだか気まずそうだし。

まぁ、クラス対抗戦も近いし忙しいのは分かるけど。今思い出したけどあいつ一組のクラス代表だったもんね。でもそれだけじゃない気がする。

……もしかしてあたしとのあの一件を、あいつなりに考えてくれてるのかな?

そんな考えが浮かんだけど、すぐにあたしは一夏の性格を思い出し『でもなぁ』と、また溜息をついた。

あの鈍感で『まぁ、過ぎたこと気にしても仕方ないな。何とか何だろう』って結構淡泊な面が強いあの一夏が。いつまでも一つの事に執着……特に女の子関連に関して深く考えないあの二ブチンが、そこまで考え込むとは思えな――



『一夏の心の中、それも結構深い場所にお前はちゃんと存在してるよ。自信を持て鈴。俺が太鼓判押して断言してやるぜ』



――っ!

瞬間、弾があたしに言ってくれた言葉が心の中でリプレイされパッとあたしは突っ伏していた机から頭を上げた。

も、もしかしてそう言う事?

あたしとの事だから? あたしに関する事だから、一夏の奴真剣に考えてくれてる……?

その考えが私の頭の中に浮かんだ瞬間―― ポッと顔を赤らめる。


……う。


う、ううぅ~~~~~~~~~っ!


赤くなった顔を隠すようにしてあたしはまた机に突っ伏して悶える。心の中はさっきとは違い気恥ずかしさと、嬉しさやらで悶々としている。


『ねぇ? 何かしらあの可愛い生き物』『仕草が猫っぽいのがまたいい味出し得るわね』『ハグさせて! 今すぐあの子ハグさせて!?』『駄目よっ! 見て愛でるだけって決めたでしょ!』『流石は代表候補生ね。ああ、かぁいいなぁ~』『代表候補生関係あるの?』『持って帰っていい?』『誰か先生呼んで。こいつクロロ○ルム沁み込ませたハンカチ持ってるわ』


なんだか周りが騒がしいけど今のあたしには良く聞こえなかったから特に気にせず、あたしは自分の思考に没頭する。

……うー。ど、どうしよっかな? は、反省してるみたいだしそろそろ許してあげようかな?

い、いや駄目よ! そこはちゃんとしないと! 間違えて覚えてる一夏が悪いんだからっ! ここで甘やかしちゃったら一夏の奴また同じこと繰り返すに決まってるんだから!

……で、でもあんまり放置しといても……ま、不味いわよね? 仲直りの切っ掛けを逃すことにならない? ここは大人の余裕を見せつけてあたしの寛容さをアピールするチャンスじゃない?

い、いやいや……あんまり簡単に許しても駄目よ。安い女って思われる可能性だってある訳だし……それに一夏ひっぱたいちゃったからなぁ。

なのに簡単に許しちゃったらあたしとの約束が軽いものだと思われるし。

なにより逆に一夏が怒りそう『簡単に許せる程度の事で、俺は叩かれたのかっ!?』て。

う~~~~! でもでもっあたしと一夏がこのままだとそれに託けて、他の娘達に付け入る隙を与えちゃうし~~~っ! 

特にあの馬鹿女二人。そ、それだけはなんとしても阻止しないとっ!

机に突っ伏したまま、あたしは両手で頭を抱え『う゛ぅ~~~~っ! う~~~~っ!』と唸りながら考え込む。


『離してっ! 今、あの子猫ちゃんには私の抱擁が必要なのよっ!』『誰が離すかぁ! 抜け駆けは禁止っつったでしょうが!?』『これで理性失ったの何人目だっけ?』『鈴たん……はぁはぁ……!』『次々と堕天していってない!? 既にヤバいわよこの娘!?』『ヒャッハァーッ【バチバチバチィッ!】アババババババッ!? あふっ(がくり)』『はぁ……これ護身用なのになぁ【バチバチ】』『なんでそんなモン持ってんの!?』『え? 購買部に普通に』『おい学園っ!?』『というか女の子がヒャッハー! って何よ』


なんだかやたら周りが騒がしくなった上にちょっと焦げ臭いにおいもするけど放置する。気に掛けている暇なんかない。

うー……どうしたら、どうしたら。

―― そうだっ! 弾に相談してみたらいいんじゃない!? 弾ならきっと協力してくれる筈よ!

破天荒で色々ブッ飛んでる奴だけど。ここ一番って時にはいつも頼りになる親友の存在に、あたしはパッと表情を輝かせ――

途端にがっくりと脱力した。

って駄目かぁ・・…何でか知らないけど、弾の奴とは一夏以上に顔を合わせてないしなぁ。

溜息をついて、あたしは項垂れるようにして机にヘタれる。

あの日以来、弾は何でか知らないけど姿を見かけなくなった。何をしているのかは全く知らない。本音にそれとなく訊ねてみたりしたけど本音も詳しくは知らないみたい。

まぁ……本音とあたしに毎日『弾特製愛込めまくってます弁当』を用意してくれるのは感謝してるし嬉しいんだけど、なんだかなぁ……。

しかもあたしと本音で弁当の中身が全く違う上に、それぞれ好物ばっか。栄養バランスも考えてる凝り具合。主夫かあいつは? でオカズ交換が絶えないじゃないのよぅあの馬鹿。

昼食時間のささやかな時間を思い出したあたしは、知らず知らずのうちに顔が緩みそうになっている事に気付いて慌てて表情を引き締める。

あ、危ない危ない変な子だと思われる所だったわ。

全く何してるんだか……本音だって寂しがってるってのに。

っていうか本音って弾に気があるわよね絶対。

まぁ、本音ならあたしも応援してあげてもいいんだけど……でもあたしとは違った意味で苦労するわねぇ~あの弾が相手だもん。

あー…また思考が別の方にいっちゃってる。

机に頬杖をついて、あたしはまた溜息をはいた。最近溜息の数が増えたなぁあたし。


―― っと、そんな事を考えていた時だった。


―― ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!


「―― ん? 何よこの音?」


突然響き渡って来た音にあたしは眉をひそめる。

うるさいわね一体何の音よ? 考えに集中出来ないじゃないの全く。

地鳴りのような騒音の方角にあたしは顔ごと視線を向けた。音は廊下の方から聞えて来る。

音の大きさは次第に大きくなってきてる所をみると、どうやらこっちに近づいてきてるみたい。一体何よ? 騒がしい。

まるで何かがこっちに向かって突進してきているような・・・…って待って? 

そこまで考えてあたしはピンと頭に閃きが走った。

もしかして、いやもしかしなくともっ! IS学園でこんな地鳴りのような音響かせて移動する奴なんて一人しか思い浮かばないというかっ! 一人しかいないじゃないの!

そのまま二組の扉に目を向けたその瞬間―― っ!


「【スッパァァーンッ!】ったぁのもおおおおおおぉぉぉぉぉぉーうっ!!」
「「「「「自動ドアなのに手動で開けたっ!?」」」」」


強引に二組のドアを手で開けた、ついさっきまで思い浮かべていたあたしの親友であり。

この学園始まって以来の問題児。

ここ最近姿を見せなかった弾がいつもの如く騒音と騒動を引っ提げて現れた。

―― ってやっぱりあんたか!? 姿を見せないかと思ったらこれよ! 本当にまた突然に現れる奴ねあんたって!


「だ、弾!? あんた一体今まで何処にっ!?」


思わず声を上げたあたしだったけど……その瞬間、弾があたしに視線を向け『クワッ!!』っと目を見開いて凝視してきた。


な、なに!? 何でそんなに目を見開いてあたしを――っ!?


そしてそのまま大きく息を吸い込んだ弾は――


「―― っバストオオオオオオオオオオオォォォォォォッッ!!」



……あ?(ビキっ)


叫び声と共に身を屈め――


「―― チッパアアアアアアアアアアァァーイィィィィ!!」


―― ドンッ!! と空気を弾く音と共にあたしに突進してきた。


「……」


あたしに向かって突撃してくる馬鹿を見つめ続けながら、あたしはそれを笑顔で迎え――



ガラッ!(窓を開ける)


『イイイイイイイイイィィィィッ!?』(馬鹿が横を素通りしていく声)


―― ガッ!(足を掛ける)


『イ?』(キョトン)


―― にこっ♪(花のような笑顔)


ヒュー(馬鹿が窓から落ちて行く音)


―― ピシャッ!!(窓を閉める)


―― ドグシャアッ!! ボキボキャッ!!(何かが潰れる音)


『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』
『五反田くんが、転落してきたあああああああっ!?』
『メディークッ!? 誰か来てえええっ!! あたり一面が血の海にいいいいいっ!!』
『……うぼぉあああああ……!!(ズリズリ)』
『嫌あああああぁぁぁっ!? 血塗れで動きだしたぁ!?』
『何で生きてるのっ!?』
『(ごそごそ)そ、促進成分配合……パイビタンD……!【シャキーン!】』
『何かビン取り出して宣伝してるっ!? 動ちゃ駄目だってば!』
『せ、【世界紳士連合】の……【シルクハットマーク】が、めじ、るし……(バタッ!)』
『ち、力尽きた……!』
『でも何だか最後までやりきった漢の顔を浮かべて満足そうだよ!?』
『あ、あれ? なんか指先に文字が書いてある?』
『ダ、ダイイングメッセージ? なんて書いてあるの?』
『え、えーと……“モップ持ってきて”』
『『『掃除する気でいるの!?』』』


騒がしくなった外の喧騒を無視して、あたしは乱暴に自分の席に腰を下ろして腕を組む。

ったく! あの馬鹿は毎度毎度あたしが気にしている事をズバズバとっ!!

―― と、その時二組の教室のドアが開く音が耳に届き。


「し、失礼しまーす」
「失礼する」
「失礼いたしますわ」
「しつれーしまーす」


二組の教室に入室の断りの声と共に入って来た四人の姿が目に写って、あたしはギョッと目を剥いた。


「い、一夏っ!? それに本音も!?」
「よ、よぉ鈴」
「やっほーりんりんー」


突然二組の教室を訪ねてきた一夏達の姿に、あたしは思わずそう声を洩らしてしまった。そんなあたしに向かって一夏は片腕を上げてぎこちない笑みを浮かべる。

本音はといえば一夏とは対照的に、いつものようにほにゃっとした表情を浮かべたまま、ぽてぽてとやたら遅い足取りで近づいて来た。

そしてあたし達の様子を一夏から一歩下がった場所から眺めている馬鹿女二人……なんでこいつらまで居んのよ。

顔を顰めたあたしはそのまま馬鹿女達に睨む様な視線を向ける。けどそんなあたしに本音がいつものように話しかけてきた。


「あれー? りんりん。だんだんがここに来なかったかな~?」
「へ? 弾?」
「うん。私達よりも先にこっちに向かったと思うんだけどー」
「…あー、あの馬鹿ならなにを血迷ったのかそこの窓から飛び降りて行ったわよ」
「えー?」
「な、何があった?」
「あたしに聞かないでよ」


一夏の呟きにあたしは疲れたように息を吐き出して机に突っ伏した。そんなあたしを本音が慰めるように頭を撫でて来る。

どうしよう……なんかすごく癒されてるあたしがいる。


『―― う~む流石俺の血、頑固でしつこいな。モップ掛けじゃだけじゃビクともせん!! 誰かーアレ持ってきてアレ。多分それで落ちるから(ゴッシゴシ)』
『なんで普通に起きて掃除してるの!? しかもなんか腰入ってて様になってる!?』
『あ、アレって何? 石鹸?』
『油汚れに~♪』
『『『『ジ○イ!?』』』』


―― そしていつもの様に復活したらしい弾の声が窓の外から聞こえ、あたしはまた項垂れるのだった。

っていうか、案外ノリが良いわね学園の生徒って……。





*   *   *




「賭け?」
「おうそうだ! 普通にやったんじゃつまらねぇ。だから今度のクラス対抗戦で俺達と賭けをしねぇか? どうだ乗らないか微【パァンッ!!】お、おぼぉぉ……っ!?(鼻血ブクブク)」
((今、右腕が見えなかったっ!?))


弾がようやく戻って来て、あたし達は今向かい合うようにして話をしている。

突然やってきた弾達の用件を聞いたあたしは、その内容に少しだけ怪訝な表情を浮かべる。

話しの内容は今度のクラス対抗戦で自分達と賭けをしないかという話しだった。詳細は至ってシンプル、負けた方が勝った方の言う事を何でも一つ聞くという物。

また突然に妙な事をもちかけてくるわね? 今度は何を企んでるんだか。

ちょっと警戒するような視線を向けるけど、弾はふがふがとティッシュを鼻に詰めながらもヘラヘラとした顔を向けて来ている。

一夏に視線を向けても、若干強張った顔をしているだけでその真意までは読み取れそうにない。一体なんだってのよ?


「また突然ね。何企んでんのよあんた?」
「えーいいじゃんやろうぜ賭けー? 普通にやったんじゃつまんねーじゃん。減るもんじゃな……まさか減るのか!? 馬鹿っ何でそんな悲惨な事になるまでやったんだ!?」
「―― 殺すっ!!」
「りんりんビークルだよー。落ち着いてー? 良い子良い子ー♪(なでなで)」
「やっ!? ちょ! 本音やめ……ああもう分かったわよ! さっさと話を進めなさいよっ!(赤面)」
「あ! ずりぃっ!? 俺もなでなでしてもらいたいっ!」
「弾さん。良い子ですから話しを進めましょうね?(なでなで)」
「お、おおう!? っさぁ、話を続けようか(キリッ!)」
「……最近、マジで凄いよなセシリア」
「う、うむ。ああも手際よく弾を抑え込むとはな」


金髪に頭を撫でられた弾が俄然やる気を出した所で会話が続行される。

なんか随分と仲良くなってるみたいだけど。何があったってのよ? 撫でられて大人しくなった弾を見て本音が「むぅ~」と唇を尖らしてるじゃい。

その様子に気付いた金髪が困ったように「あら」と声を洩らして、弾の頭から手をどかしニッコリと笑顔を本音に返す。それに本音が「う、う~~~っ!」と唸り拗ねた顔を隠すようにあたしに抱きついてきた。

……なんか雰囲気が違くない? 金髪。


「何でも一つって言ったけどそれって何でもいいの? 本当に?」
「おう出来る範囲での事ならなんでもOKだぞ? 一夏に『俺は神だ!』って叫ばせながら町内を走り回せるといった、多少無茶なモノでも全然構わないさっ!!」
「おいコラ待て、色々待てコラ!」
「大丈夫だ一夏。人としての尊厳を捨て去れば君にもきっと出来る」
「出来るけどな!? 出来るけど絶対にしたくないぞっ!! どこが多少だ無茶すぎるわ!?」
「うわ男らしくねー」
「男らしい関係ないだろっ! 本当にやれって言われたらどうすんだっ! 俺に社会的に死ねってか!?」
「カモン! こっち側へ!」
「自分がそっち側の住人と認めてるお前の潔い姿勢に脱帽を禁じえないが絶対に嫌だからなっ!?」


目の前で馬鹿騒ぎする一夏と弾を尻目にあたしはしばし思考に没頭する。

あたし達でも出来る範囲の事であれば、多少無茶な命令でも可。

そしてその対象は一夏に限らず弾や本音、そして後ろの馬鹿女達でも構わない……ね。つまりこれはあたし一人に対し一夏達五人が勝負を申し込んでるって事よね?


「もしアンタ達が勝った場合はどうするの? まさかとは思うけど、あたしにあんた達五人それぞれの言う事を聞けってんじゃないでしょうね?」
「いやその点は安心しろ。俺達が勝ったらお前に命令権を持てるのは一夏って事で話はついてる。つまりお前が勝ったら、お前は俺達の内の一人に好きに命令できて、俺達が勝ってもお前に命令出来るのは一夏一人って内容だ。どうだ? 悪くない内容だと思うがね?」
「成程ね。それじゃぁつまり――」


そこであたしは言葉を区切って、挑発的な視線を一夏と弾の後ろに突っ立っている馬鹿女の黒髪の方へ向けた。

あたしが突然投げかけた視線に黒髪は一瞬驚いた様子だったけど――


「―― あたしがそこの女に『一夏の部屋から今すぐ出ていけ』って命令しても、全然構わないって事よね?」
「―― なっなんだと!?」
「あら」
「ふむ?」


あたしの言葉に黒髪は血相を変えた表情になり、横の金髪は少し意外そうに眼を瞬かせ頬に手を添え、弾は少し考え込む様に手を顎の下に持ってきながらあたしに視線を向け続ける。

黒髪の表情を見てあたしは挑発するような笑みを浮かべた。

はは、焦ってる焦ってる。その事に頭が回らないなんて本当にオメデタイ女ねぇ?


「何驚いてんのよ? 別に難しい事でもそれ程無茶な事を言ってないでしょあたしは? 十分『あたし達でも出来る範囲』を守っている命令だと思うんだけどなぁ」
「っ!? い、いやそれは、そうだが……!」
「はぁ? まさかその覚悟も度胸も無くあたしに賭けを持ちこんだっていう訳? 何それ? ふざけてんのアンタ」
「ぐぬっ……!」


言葉に詰まる黒髪にあたしは心底見下している表情を浮かべてやる。

そんなあたしの表情を見ても、黒髪が何か言い返そうとするも言い返せないでいるようで悔しそうに表情を歪める。

それを見て少し気分が良くなったあたしは、さらに追撃を行おうと口を開こうとした―― その時だった。


「あら、別によろしいじゃありませんの箒さん? その程度の事であればそれ程思い悩む必要なんてありませんもの。」
「―― なっ!? セ、セシリア?」


不意に黒髪の横にいた金髪が微笑みながらそう呟いた。

突然の言葉に黒髪は驚いたように金髪に目をむけるけど、その視線に金髪は余裕を持った眼差しを向け、そして黒髪の体を支えるかのようにその両肩に手を添えると優しく微笑んでみせたのだった。

その微笑みに黒髪は少し戸惑った感じだったけど、その体からゆっくりと強張りが抜けていくのが傍目からでも明らかに分かった。

そして次に金髪はあたしに視線を向けて―― あたしは息を呑む。

睨んでもいる訳でもなく、敵意を含んでいる訳でもない視線だというのに、

―― 力強い光を持つ視線に不覚にも気押されてしまったからだ。

慌ててあたしも、すぐに負けじとグッと眼に力を込めるけど、そんなあたしの視線を受けても金髪は微笑んで見せた。

な、何なのよ……!? 一体何だってのよこいつ!? 以前とは別人じゃないの!?

そんなあたしの心情を知ってか知らずか、金髪が口を開く。


「『一夏さんの部屋から出て行け』ですか。凰さんは随分と小さな事を御望みになるのですね?」
「ち、小さい!? ど、どういう事よ! ―― っあ、分かった! アンタにしたってあたしのこの命令は自分にも都合が良いからそう言ってんでしょ? 挑発して、あたしこの命令を実行させようって魂胆? はっ! 意地汚い奴ね。素直にそう言えば良いじゃないっ!」
「いえ全然? むしろこの際箒さんが部屋から出ていこうとも、それを機に貴女と一夏さんが同室になろうとも、私は大いに構いませんわ」
「な、何ですって!?」
「セ、セシリア。一体どういう事だ?」
「箒さんもそんなに思い悩む必要はありませんわ。ほんの少し我慢をするだけでいいのですから」
「が、我慢? 何を我慢するというのだ?」
「それは勿論『別の部屋に移る日が少しだけ早まる事』を、ですわ」
「「「は?」」」
「おおう。成程そう言う事か、セシリーちゃんクールだねー」
「あ……そ、そっかー……」


金髪の言葉にあたしと黒髪、ついでに一夏も揃って首を傾げるけど、弾は納得のいったような声を上げる。本音は……なんだか寂しそう? ど、どうしたってのよ。

部屋から移るのが少しだけ早まる事を我慢する、ですって?

困惑するあたし達に向かって金髪は視線を向けると、再び口を開いて話を続けた。


「一夏さんお忘れですか? 一夏さんも弾さんも『別の部屋の準備できるまでの間だけ』という条件で、箒さんや布仏さんと同室になっている事を。」
「―― はっ!? そ、そうだった。わ、私とした事が忘れいた」 
「あ……そういや最初にそんな事言われたな」
「はぁ!? な、何よそれ!? あたし聞いてないんだけど!?」
「ついでに言うと部屋は一カ月位で準備できるって言ってたぜマヤたんは」
「な、なんですって!?」
「ええ、つまりはそう言う事ですわ。今の部屋割りが行われたのが先月の始め頃ですから、そろそろ一カ月が経ちますわね」
「う、嘘っ!?」
「いやホント。あー…のほほんちゃんと一緒に過ごせんのも後少しかぁ……寂しくなるな」
「うー……」
「今はクラス対抗戦の事もありますし、もし部屋を移るとしたらその後になると思いますわ。その事を踏まえると……凰さんが箒さんに提示した内容はとても小さい事だと思うのですが? もし凰さんが賭けに勝ったとしても、その内容が有効になるのはクラス対抗戦の後ですもの。数日か一日、もしくは数時間か……恐らくそれ程長くは無いと思われます。凰さんがその程度の日数でも構わないと言うなら、箒さんも特に悩む必要がないと思うのですが、どうでしょう?」
「う、うぎぎっ!?」
「た、確かにそうだな……というより寧ろこっちがそれで良いのかと聞きたくなる内容になってしまうな?」
「さらに言えばその後は先生方の介入がありますから。一夏さんがそれ以降で女子生徒と同室になるという可能性は今後一切無いと考えていいでしょう。もしその事で文句を言われても、これ以上は『私達の出来る範囲』の事ではなくなりますのでどうしようもありません。それでもよろしいのですか凰さん?」
「く、くぬぅぅぅ~~~~~~っ!?」
「りんりんー。どーどー♪」


本音がまたあたしの頭を撫でるけど、今度はそれでもあたしは落ち着けるようになかった。

は、腹立つっ! 至極もっともな事を指摘された事もそうだけど、それ以上にあの金髪の諭すようなあの態度が心底腹立つ……!!

そんなあたしの様子に、弾はニヤニヤした表情を向ける。


「で? どうすんだ鈴それで良いのか?」
「い、いい訳ないでしょうが! な、なし! 今のはなしよ!」
「ええ、それがよろしいと思いますわ」
「う、うっさい! アンタは黙ってなさいよ金髪っ!」
「あら? ふふっ余計な事でしたわね。申し訳ありません」
「ぐぎぎぎ……!!」
「よ、余裕だなセシリア」
「……むぅ」
「へい! そこの言い負かされて膨れっ面のチャイナッ娘」
「ま、負けてないわよっ!」
「へいへい。まぁとにかくちょいと密談があるから耳を貸せ」
「は? な、何よ密談って」
「いいからいいからちょっとこっち来い。一夏、悪いけど席外すがいいかね?」
「へ……? あ、ああ」


そう一夏に言葉を投げかけた弾。

そのまま席から立ち上がりあたしに手招きをして教室の隅まで移動する。一体なんだってのよ?

多少訝しみながらもあたしは渋々といった感じで教室の隅まで移動すると、弾と一緒にしゃがみ込んでボソボソと会話する。


(一体何よ? 一夏達には聞かれたくない事なの?)
(んー実はだな鈴?)
(何?)
(最近俺どうかしてるみたいでな?)
(んなのしょっちゅうでしょうがっ!?)
(だろうな。まぁそれはいいとして、実は今回お前にこの賭けを持ち込んだのには深い理由があんだよねー)
(はぁ? 理由って何よ?)
(……お前一夏と仲直りする切っ掛けを掴めてないだろ)
(―― ぐっ! そ、それは……!)
(やっぱり。まぁ俺も最近忙しかったから偉そうなこと言えんが……いつまでもこのまんまってのは不味い事に鈴も気付いてんだろ? いい加減何か行動を起こさんと、このままズルズルと引き摺る事んなるぜ?)
(う、うぅ……そ、それはそうなんだけど……どうして良いのかわかんないのよぅ)
(―― で、だ。そんなお前等親友の為に俺が考え出した策ってのが今回の賭けって訳なんだよ。驚いた?)
(ど、どういう事っ!?)
(どうもこうもない。今回の賭けの本当の狙いはお前等の仲違いを修復するのが目的って事だ。だからお前にこの賭けに乗ってもらわねぇと困るんだよ)
(ホ、ホント!? それ本当なの!!)


驚きすぎて思わず念を押すように弾に聞き返してしまったあたしに、弾はゆっくりと頷く。その顔は相変わらずヘラっとしているがその瞳に冗談は一切見られなかった。

パァっと笑顔になった私だったけど、次の瞬間には表情を引き締めもう少しだけ弾に近づく。


(く、詳しく聞かせてっ!)
(この案を用いた理由は一つ。お前等二人添って結構頑固な所があるからなぁ。下手に小細工すると返って反発し合って逆効果になりかねん。だからこそこの賭けを用いた作戦は有効なんだ)
(ど、どういう事?)
(だって分かりやすいだろ? ぐだぐだ口で言い合うより思いっきりぶつかった方がお前等の性に合ってる。負けたら相手の言う通りにする。シンプルかつ明快だ)
(んー……た、確かに)
(此処だけの話。一夏の奴もし賭けに勝ったらお前に謝罪を受け取らせる気だ)
(へっ!? な、何それ!?)
(一夏の奴あの日以来、真剣にお前との約束を思い出そうとあいつなりに頑張ったらしいんだが……結局駄目みたいでさ? これじゃあ何時まで経っても、お前と仲直りできないって悩んでるんだよ)
(……そ、そうなんだ)
(約束は思い出せない、けどお前とは仲直りしたい。そこで今回の賭けだ。賭けに勝ってお前に謝罪を受け取らせる事。『約束の内容はまだ思い出せてない。けどお前にはちゃんと謝りたい。だから俺に謝らせてくれっ!』てな? もちろんお前に謝罪を受け取らせた後も、約束の事は放置せず必ず思い出す事も誓う筈だ。つまりあいつは今現在の鈴との関係を修復したいだけなんだよ。だからこそこの賭けに乗ったんだ。)
(ば、馬鹿じゃないの……あいつ)
(おう馬鹿だ。けど馬鹿なりにちゃんとお前の事考えてるんだよ。言ったろ?『一夏の心の深い部分に鈴はちゃんと存在してる』って)
(……うん)


弾の言葉がじんわりと心に沁みて、あたしは胸の内が温かくなっていく。顔の表情が緩んでいくのも分かったけど、それすらも気にならないぐらいあたしは喜びに震えていた。

あの馬鹿……本当に何処までも馬鹿正直に真っ直ぐなんだから。

一夏の気持ちが嬉しくて、弾のあたし達を想っての行動がくすぐったくて。

その幸せを噛みしめるようにギュッと胸に手を押しつけた。

そんなあたしの仕草に苦笑を浮かべて眺めていた弾が、再びあたしに向かって口を開く。


(つー訳で鈴。この賭けに乗ってくれないかね?)
(ふ、ふん! しょうがないわね。の、乗ってあげるわよ!)
(やーん♪ 照れちゃってきゃーわイイー♪)
(う、うっさい馬鹿! ……で? あたしはどうしたらいいの? クラス対抗戦で一夏に勝ちを譲れっての? 流石にクラス代表として、というか代表候補生としてそれはちょっと不味いんだけど)
(アホか! んな事したら全部台無しじゃい。むしろ全力で迎え討て、というか勝っても構わん)
(へっ?)
(あのな? 一夏は今日までの間お前に勝つ為に特訓をしまくってるんだぞ? 体力作りから接近戦での立ちまわり、そしてお前のIS対策も練りに練ってる。お前の過去の戦闘データも掻き集めるなんて慣れない事をしてでもな)
(い、一夏が!?)
(だからお前が少しでも手を抜いたりしたら速攻で一夏にバレるぞ? そしたら不完全燃焼な試合になって色々とオジャンだ)
(そ、そっか。でも本当に勝ちに行っちゃっていいの?)
(勿論だ。お前が賭けに勝っても関係修復はちゃんとできんだから安心しろ)
(……へ? ど、どうやって?)
(んなもん簡単だ。お前が勝ったら一夏に『次の休日、一日あたしに付き合いなさい! もちろんお金は全部あんた持ちだからね!』って言えば良いんだよ)
(……はへ?)
(つまり、丸一日一夏とラブラブデートに行けって事。金は全部一夏持ちで一日中一夏を振り回してやれ。それで万事全て上手くいく)
(デ、デデデッデートっ!? あ、あああたしと一夏がっ!?)
(おーそうだ。ショッピングにカラオケにレストランで食事と思いつく限りの事を、一日中一夏に求めろよ。時に小悪魔に、時に子猫のように、わがままに甘えまくっちまえ!)
(あ、甘えろって! な、なななにゃにを言ってんのよ!?)
(そんでもって散々一夏を振り回した後に、デートの締めくくりにこう言えば良い『今日は楽しかった。仕方ないからこの位で勘弁してあげるわよ。』ってな)
(……へ?)
(つまりそのデートの一件で一夏を許してやるって言えば良いんだよ。そうすりゃ一夏も、まぁ色々と思う事もあるだろうが納得するだ。)
(……)
(んで、肝心の約束内容に関しては最後の最後に『それはあんたの宿題よ。ちゃーんと思い出しなさいよね!』って可愛らしさ全面に押し出して言ってやれば、一夏も約束の事をしっかりと意識するだろし、かつ鈴とも仲直りができた上にいい思い出の一ページとし一夏の心に刻み込まれることだろう。もしかしたらそれ以上にお前を意識し始める可能性もなくはないな)
(……)
(一夏とごく自然な流れでデート出来る上に仲直りも出来て、かつ約束の事も忘れさせない……むしろ一夏との賭けに勝った方がお前のメリットはめちゃデカイと思うんだが? 無論デート中は邪魔が入らないように俺が全力でバックアップする)
(……弾)
(ん?)
(あんた天才よ)
(ふっ……それ程でもねぇよ【キラン!】)
(―― 全力で一夏を叩きつぶしてやるわっ!!)
(おう! その意気だ!)


右手をきつく握りしめ思わず立ちあがったあたしは、猛然と心に誓った。

ふ、ふふ、ふふふふふふっ! 勝つわ来週のクラス対抗戦! 何が何でも一夏に勝ってやるわっ!

あたしへの対策を練っているようだけど。

ふふ! 甘い甘いわよ一夏っ! 過去の戦闘データなんて見ても無駄よ! あたしは常に成長するんだからっ! 

悪いけど来週のクラス対抗戦、もといあんたとの賭けはあたしが勝たせてもらうっ!

そっそして……いいいい一夏とデ、デートに……!! ふ、ふふふふふっ!!


―― 滾ってきたあああああああああああああああああああああっ!!


闘志に燃え上げる乙女心を滾らせ、あたしはクラス対抗戦への意気込みを最大限に引き上げる。

色々と燃え上がっているあたしだったけど、しばらくしてすぐあたしに向かってなんだか生温かい視線を向けていた弾と一緒に一夏達の元へと戻って行った。

戻ってきたあたし達に一夏が言葉を投げかける。


「ん、終わったのか? 一体何を悪だくみしてたんだ」
「おう! どんな命令がお前にとって一番苦痛なのかを話し合ってきた!」
「本当に悪だくみだったのかよ!? 何話しあってんだお前等!」
「一番有力なのは、一夏に千冬さんの部屋で下着を物色させて、千冬さんに『千冬姉!  家から予備の下着持って来たよ!』と、職員室に飛び込ませるって案なんだが」
「―― 待て本気で待て。それ洒落になってねぇ……っ!?(顔面蒼白)」
「ふふん♪ 一夏っ! あたしに賭けを持ち掛けるなんていい度胸してるじゃない? いいわよ受けて立つわっ!! 後悔するんじゃないわよっ!!」
「俺は今物凄く後悔してるんだが!? 弾の話は嘘だよなっ!? なぁっ!?」
「さて、鈴が承諾してくれた事だしこれで決まりだな! 来週のクラス対抗戦、負けた方が何でも言う事を聞く事! 異論は無いな!?」
「覚悟しなさいよ一夏っ!」
「ヤバい・・…!? クラス対抗戦絶対に負けられねぇっ! 絶対に負けねぇぞ鈴! そっちこそ覚悟しとけよ!」

「……賭けの対象に私達も入っているのを忘れてないか?」
「うふふ。どうやら鈴さんの眼に、私達の姿は既に入っていないようですわね」
「おー二人共燃えてるねー♪」


本音達が何か喋っていたようだけど、弾を挟んで正面から睨みあうあたしと一夏には聞こえておらず、お互いに闘争心を剥きだしにして相対する。

勝っても負けても、仲直りは出来るけど―― あたしに負ける気なんかこれっぽちも無い! 絶対に、ぜーったいに一夏に勝って! デ、デートに行くんだからっ!!



恋する乙女心を熱く燃やし、あたしは来週のクラス対抗戦に向けて全力で取り組む事を決意したのだった。




―― そこに色々な思惑があった事にまだ気付かないままで。





【 弾と愉快な仲間達 SIDE 】


『……なんか妙な呼称で呼ばれた気がすんな?』
『おりむーどうかしたのー?』
『ああいや、なんでもない。それよりも弾上手くいったか?』
『おう勿論だ。来週のクラス対抗戦、鈴は本気でお前に向かってくるぜ? 気合い入れろよ一夏。後はお前にかかってるんだからな?』
『ああ分かってる。箒にセシリア、これからも俺の特訓に付き合ってくれるか? クラス対抗戦まで時間は無駄に出来ない』
『うむ分かった。アリーナが使用できない場合は剣道場で私が鍛えてやる。まだまだ太刀筋が甘いからな』
『アリーナが使える時は私がISでお相手致します。一夏さんも大分ISに慣れてきたご様子ですが……射撃武器に対しての間合いの詰め方が少し強引すぎる節がありますから、まずはそこを課題として取り組みましょう』
『ありがとう二人共。助かるよ』
『『一夏が鈴に勝つために、この二人に特訓をお願いしている。』……これで一夏の傍に箒ちゃんとセシリーちゃんがいても、鈴が不快に思わない納得のいく理由ができたな。やれやれ、最近色々とナイーブなチャイナっ娘には気を使う事が多くて困るぜー』
『仕方ありんませんわ。私も箒さんも凰さんに快く思われておりませんから……』
『その通りだな。』
『大丈夫だよー。二人ともちゃんとりんりんとお話すればきっとすぐに仲良くなれるよー』
『……そうだといいのだがな』
『なーに大丈夫だって、鈴の奴だって【ピリr――ピッ!】へいお待ち! いつでも何処でも淑女の為にワンコール対応! 五反田 弾です!』
『なんで電話の相手が女子って分かるんだ?』
『気にした所で意味は無いぞ一夏』
『―― おおう虚さんじゃないですか! どうしたんですかね一体? ……ふむ? ほほー……』
『電話はお姉ちゃんからみたいー』
『お姉ちゃんて……え!? のほほんさんのお姉さん!? お姉さんいたのかのほほんさん』
『いるのだよこれがー。えへへ驚いた~?』
『―― 了解っす。どうもありがとございました。そんじゃまた後で【ピッ】』
『だんだんー? お姉ちゃんは何てー?』
『んー? 手札の一つが手に入りそうって連絡よ? ちょっとこれから会って来るわ虚さんに』
『なっ!? それ本当かよ弾!? というかお前他の人にも協力を頼んでたのか?』
『まぁ時間も無いしな、しょうがないさ……あーそれからセシリーちゃん。ちなみにそっちはどんな感じかね?』
『そうですわね……集まるにはもう少々時間が必要だと思います。何分調べ上げる事が多いので、ですが必ず間に合わせますわ。ご安心ください』
『ん、ありがとねセシリーちゃん。悪いねこんなことまで頼んで?』
『構いませんわ。どうかお気になさらないでください』
『だんだん~、私も一緒に行っていいー?』
『勿論だ! そんじゃここいらで別行動といくかね?』
『だな。剣道場に行こうぜ箒』
『うむ分かった。では行くとしよう』
『私は部屋でチェルシーに連絡を入れてみますわ。経過を確認したいので』
『あんまり無茶やって当日に動けなくなるなんて事になんなよ一夏?』
『分かってるよ。お前こそあんまり派手な事しでかすなよな!』
『箒ちゃんも一夏をよろしくね?』
『大丈夫だ。私がしっかりと見ておく心配は無用だ』
『セシリーちゃんもチェリー……じゃなかった! チェルシーさんによろしく言っといてね!?』
『……ですからそのチェリーって何ですの? というかチェルシーが電話で『ま、まさかその声はバロン!? バロンなのっ!?』って叫んでましたけど一体どういった関係ですのっ!?』
『『また変な名称がでた』』
『―― 色々あったのさ(遠い目)。そんじゃ行くぜのほほんちゃん! 背中へカモン!』
『ぱいるだーおーん♪(ガバっ)』
『ほんじゃねー?』


シュタタタタタタタタ――ッ!!(風になる)


『あっ! はぁ・・…本当に謎な人ですわね』
『まぁ今に始まった事じゃないだろう? ……それじゃ俺達も行くよ』
『そうですわね…・…はい、どうかくれぐれもお体には気を付けてください。一夏さん』
『……セシリア、お前は来ないのか?』
『ええ私もしなければならない事がありますので、一夏さんをお願いしますわ箒さん』
『そ、そうか承知した』
『それじゃあなセシリア』
『はい……一夏さん?』
『ん? どうかしたのか?』
『―― ふふっ。貴方が一刻も早く立派なナイトへと成長する事を祈っていますわ♪』
『へ……? な、何だよ急に』
『何でもありませんわ。では……』


コッコッコッ…。


『何なんだよ一体?』
『―― むぅ、セシリアめ……』
『ん? どかしたのか箒?』
『ええい何でもない! さっさと移動するぞ一夏! 早くしろ!』
『な、何だよ急に? 言われなくても行くって』







様々な思いを乗せ――


クラス対抗戦の日はやって来る――













【 おまけ 】


「……なぁ」
【……】
「いい加減に機嫌直してくれよ相棒~」
【……】
「ごたんだごーごりっぷくだねー?」
「しょうがないだろ~~~! 『六代目』の魂を感じ取っちまったのは事実なんだからさー!」
【……そんなにあっちが良いならあっちに行けばいいじゃん】
「ようやく口をきいたかと思ったらこれだよ。あーもー悪かったってー」
「ごたんだごー許してあげよー? ねー?」
【……のほほん嬢】
「ん? なにー?」
【昨日の夜、相棒が寝言で『ぬふふふ虚さーん♪』って言ってましたよ?】
「何? 俺そんな事寝言で言ったのか? そんな素敵な夢を見た記憶はないんだがねー?」
「……」
「う、うん? どったののほほんちゃん? め、眼がなんか怖いな~と思う今日この頃ですよ?」
「……」
【……】
「あれ!? なんだか俺メッチャ責められる!? 何だこの状況!?」







後書き

・・・・・超お久しぶりです。釜の鍋です・・・・・・。いやー・・・・その・・・更新遅くなりまくって申し訳ないですっ! 日付見て見たら一カ月もほったらかしでした・・・。言い訳は・・・はい特にないです。なんですかねー・・・パソコン向かっても書く気になれないというか気が乗らないというか・・・もしやこれが俗に言うスランプか!? まぁ、それは置いといて、さて次回。ようやくクラス対抗戦が始まります。弾が、一夏が、箒が、セシリアが、鈴が、生徒会に簪が大活躍しますっ! さーてどうなることやら。それではまた次の更新で・・・・・が、頑張ります。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.030055999755859